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2007年08月30日(木) 06時00分

厚労省前九州局長に高級車、補助金受給側が無償で提供読売新聞

 厚生労働省九州厚生局の松嶋賢(まさる)・前局長(59)(今月24日付で退職)が2005年11月、大阪府内の社会福祉法人の前理事長から、中古の高級乗用車1台を無償で受け取っていたことが明らかになった。

 乗用車は500万円前後の価値があったとみられる。松嶋前局長は当時、同省障害保健福祉部の課長として、社会福祉法人の指導を統括する立場にあり、国家公務員倫理法に違反する疑いが強い。同法は特別養護老人ホームを巡る元厚生事務次官の汚職事件などを機に制定された経緯があり、同省の補助金の受給側と元高官との癒着が再び明らかになったことで、厳しい批判が集まりそうだ。

 読売新聞の調査や松嶋前局長の説明によると、車を無償で提供したのは、大阪府枚方市の社会福祉法人「枚方療育園」の山西悦郎・前理事長(80)(昨年4月に理事長を辞職)。

 提供されたのは、トヨタの高級乗用車「セルシオ」で、03年8月末に山西前理事長の内妻名義で新車登録されたが、2年2か月後の05年11月、内妻が新車に乗り換えたのを機に、山西前理事長が「いらないから、持っていかないか」と持ちかけ、松嶋前局長が応じたという。

 この車の新車価格は750万円前後で、人気車種のため、当時の中古車市場では500万円程度で取引されていた。現在は、松嶋前局長自身が、埼玉県内の自宅で使用している。

 松嶋前局長は昨年9月、九州・沖縄地区の衛生・福祉の許認可事務などを担当する九州厚生局長に就任した。同省の地方厚生局は全国7か所にあり、局長は本省の局長・審議官級と待遇がほぼ同様で、ノンキャリアの登用は同省初。今月勇退したが、04年7月〜05年9月には、障害保健福祉部の障害福祉課長として障害者支援の施策を担当。05年10月〜06年8月まで同部企画課長として、社会福祉法人の認可や障害児施設の指導・監査を統括していた。

 枚方療育園は大阪、兵庫、埼玉で、10か所以上の特別養護老人ホームや障害児施設などを運営。03〜04年度にかけて埼玉県内の特別養護老人ホームを増築した際、約1億2800万円の施設整備費補助金を同省から受けたほか、兵庫県内の重症心身障害児施設の増築でも、03〜04年度に計約4億5600万円の補助金を受給している。

 松嶋前局長は、読売新聞の取材に、山西前理事長の妻(故人)と自分の妻がいとこだったと説明。前理事長が上京した時などに数万円の現金を受け取ったことなども認め、「前理事長はいわば身内で、車や現金の提供は、あくまで私的な援助。公私の区別は明確にしており、便宜を図ったことはない」と語った。

 山西前理事長は「(松嶋前局長とは)40年近い付き合いだが、便宜を図ってもらうよう依頼をしたことはない」と話している。

 国家公務員倫理法は、公務員が利害関係者から金品の供与を受けることを禁じ、相手が親族などの「私的関係者」でも、金品供与は「職務の執行に対する疑惑や不信を招く恐れがない」時にしか認めていない。

http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20070830it01.htm?from=top