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2007年08月30日(木) 15時41分

巧妙化する架空請求 信用逆手に実在の弁護士をかたるケースも産経新聞

 手を替え品を替え後を絶たない「架空請求」は、平成16年度をピークに件数自体は減少傾向なものの、手口は逆に巧妙化。最近は弁護士をかたる手口が目立つようになり、先月末には実在する弁護士や法律事務所の名前を無断使用した「民事訴訟通告書」も現れた。国民生活センターや弁護士会などは注意を呼びかけている。(田辺裕晶)
 ◆事務所名で
 名前をかたられた都内の弁護士事務所などによると、この民事訴訟通告書が各地へ送られたのは7月末から8月10日ころまで。「株式会社メンズ・プロモーション」と連名で、「通信販売で購入した商品の入金が確認できないため、事務所が代理人として民事訴訟手続きをとる」と通告。所在地、電話番号は実際とは異なるものだった。
 国民生活センターでは「架空請求の可能性が極めて高い」としてホームページなどで注意を喚起。茨城県消費生活センターには7月31日から8月3日までに、この通告書に関する相談が25件寄せられた。うち通告書に記載された番号に電話した県内の男性が、2回にわたり計六十数万円をだまし取られるなど、2件の被害があったという。
 名前をかたられた事務所には「本当にそちらの事務所が出したのか?」といった問い合わせが青森、静岡、宮崎など計6県から50件以上寄せられ、警察に届け出るよう勧めるなど対応に追われた。所属弁護士は「より本物らしく見せるためにうちの名を使ったのだろうが、送られた方にも、われわれにも、本当に迷惑な話だ」と憤る。
 ◆相談件数増
 国民生活センターの集計では、架空請求の相談件数は16年度の67万5645件を最多に減少しており、今年度は7月末の時点で1万7912件に留まっている。
 担当者は「手口はより悪質になっている」と話す。これまで多かった「法務局認定法人」や「財団法人」などだけでなく、弁護士事務所を名乗ったり、具体的な金額を明示せずにまず連絡を求めて個人情報を得ようとしたりする例も。
 特定地域へ短期間に大量の架空請求書を送り、消費生活センターなどが注意喚起するころには他の地域に狙いを移すことも珍しくない。
 請求に一度応じると、「販売会社が納得していない」「追加の弁護士費用が必要」「ブラック情報の削除料」など次々と口実を作り、巧みな話術で追加の支払いを要求。こうした手口はオレオレ詐欺にも似ている。
 東京都取引指導課によると、昨年6月ごろには月500件程度まで減った電子メールによる相談件数が、今年1月ごろから再び増え始め、現在は月1500件前後で推移している。「架空請求は少ない元手でもうけられる。公的機関の対策強化で一度は影を潜めてたが、再び活発化してきている」という。
 ◆電話しない
 身に覚えのない請求は無視するのが一番。とはいえ何らかの理由で、不安を覚えた場合はどうすればいいのか。「本当にその会社から購入したのか、まず確認する必要があります」(国民生活センター)。実際に代金の未払いがあっても、地元の消費生活センターなどに相談すれば間に入ってくれる場合もある。「通知された番号へ、自分で電話をかけないことが重要です」という。
 「オレオレ詐欺に比べると実際に被害に遭う人は少ないようだが、弁護士の信用にも影響するゆゆしき問題」と話すのは、東京弁護士会副会長の須田徹弁護士。同会では弁護士をかたった架空請求をHPで注意喚起しているほか、報告があるたびに警視庁へ情報提供している。須田弁護士は「日本弁護士連合会のHPで、弁護士の名前や事務所の住所・電話番号を検索できる。電話する前に本物の弁護士かどうか確認してほしい」と呼びかけている。

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