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2007年08月30日(木) 13時04分

参院選・小林温氏派の公選法違反:陣営出納責任者ら起訴 小林氏姿は見せず /神奈川毎日新聞

 ◇コメントを紙で発表−−自民県連内から会見求める声
 参院選神奈川選挙区で再選を果たした自民の小林温氏(43)陣営の選挙違反事件で、出納責任者の鈴木美香被告(33)らが29日起訴されたことを受け、小林氏は事務所を通じ「深くおわび申し上げます」と謝罪するコメントを発表した。しかし同氏は出納責任者らが今月7日に逮捕されて以来公の場に姿を見せておらず、職員が起訴された自民県連も記者会見を開かなかった。同県連内からも「詳しく説明すべきだ」との声が上がっている。
 小林氏のコメントは同日夕、東京・永田町の参院議員会館の事務所を通じて出された。A4判1枚で、全文は以下の通り。
 <本日、私の秘書が公選法違反容疑で起訴されたことを知りました。
 今回の選挙に当たりましては、選挙関係者に対し、関係法令を遵守し、適正な選挙を行うよう注意してまいったところでありますが、このような事件が起きてしまったことについて、県民の皆様、ご支援いただいた皆様に対し、深くお詫び申し上げます。
 現在は報道された以上のことは分かりかねますので、今後の裁判を通して、事実関係を正確に把握した上で、対応を考えて参りたいと考えております>
 事務所の秘書は毎日新聞の電話取材に「コメントは本人から電子メールで送られてきており、居場所は分からない。きょうは詳しい状況が分からなかったので記者会見を開かなかったが、今後の対応は未定だ」と話した。
 横浜市中区の地元事務所では、ガラスのドアに「捜査の推移を見守り、要請があれば捜査に協力する。心配をかけ申し訳ない」と書かれた7日のコメントが張り出されたまま。応対した秘書は小林氏の居場所は分からないとしたうえで、公の場に姿を見せないことに「コメントは差し控えたい」と語った。
 横浜市中区の県連事務所に詰め掛けた報道陣に「裁判の推移を慎重に見守っていきたい」と書いた文書を配布した竹内英明県連幹事長は硬い表情。「弁護士や県連内で協議した結果、裁判の前にこれ以上のコメントは控えるべきだと判断した」と説明したうえで「裁判で争うことになるだろう」と今後の見通しを述べた。小林氏の対応については「小林氏自身の判断だ。今日は連絡を取っていない」とした。
 一方、同県連内では「これまでは捜査に支障が生じたかもしれないが、起訴された後は説明責任が生じる」(国会議員)として小林氏の記者会見を求める声が上がっている。「投票してくれた89万人に理解してもらうよう県連としても努力しなければならない」(県議)との意見もあり、県連は30日に選対本部執行部会議を開き、経過を報告したうえで今後の対応を協議する。【山下修毅、笈田直樹】
 ◇背景に人手、人材不足−−選挙運動への甘い認識も
 事件の背景には小林氏陣営の人手や人材不足があった。同陣営関係者によると、普通の国政選挙の陣営には約100人の運動員やボランティアがいるが、小林氏の陣営は全部で約60人だったという。
 ある衆院議員秘書は「陣営の中で本当に選挙を知っているのは6〜7人だけだった」と明かす。事務所で指示を出す人は乏しく、関係団体からの推薦状が数枚なくなり、「事務所に張っていない」と苦情が来るトラブルなどもあったという。ドタバタの中で始まった選挙戦で、大学生らがかき集められたのは選挙まで2カ月を切った6月だった。
 捜査で問われたのは事務員などとして登録された選挙運動員の活動に対する陣営の甘い認識だった。街頭活動の計画立案を担当した山口被告は大学生らに公選法で規定された選挙運動員用の腕章をつけさせてビラ配りをさせていたが、腕章をつけていても選挙運動に対する報酬を支給できない。県連関係者から「どこの陣営でもやっている」との声も上がる中、ある捜査幹部は「登録さえすればビラ配りなどの選挙運動に対して報酬を支払っても大丈夫という間違った理解があった。それを明確に違法と示すことができた」と捜査の意義を強調する。
 鈴木被告は小林氏の公設秘書で側近中の側近で、小林氏本人の事件への関与にも注目が集まった。元秘書は「鈴木被告は事務所の経理を担当していたが、(買収に使ったとされる)百数十万円ものカネを自分の判断だけで動かせたのだろうか」と首をひねる。一方、県警幹部は「小林氏への関与を示す確たる証拠はなかった」と話し、捜査は事実上終了する見通しだ。
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 元秘書によると、鈴木被告は事件前から、今回の選挙を最後に小林氏の秘書を辞めるつもりだったという。【鈴木一生、野口由紀、山衛守剛】
 ◇連座制で小林氏の当選、取り消しも−−鈴木被告罰金刑以上確定で
 今後開かれる「百日裁判」で鈴木被告の罰金以上の刑が確定すると、連座制が適用され小林氏の当選が取り消される可能性がある。
 連座制とは、候補者が選挙違反に直接かかわってなくても、候補者に近い人が買収や利益誘導などの悪質な罪を犯した場合に適用される。今回起訴された鈴木被告は選挙運動の収支を管理する「出納責任者」で、連座制の対象となる。
 鈴木被告に罰金以上の刑が確定すると、裁判所から小林氏に刑の確定が通知される。小林氏は通知を受けた日から30日以内に、検察官を被告として高等裁判所に当選が無効とならないよう確認を求める訴訟を起こすことができる。しかしこの訴訟で小林氏の敗訴が確定した時や訴訟を起こさないまま30日が経過すると連座制が適用され、当選取り消しと今回出馬した参院選神奈川選挙区から5年間立候補できなくなる。【堀智行】
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◇連座制を適用された主な国会議員
選挙      議員名   政党 選挙区          違反行為
03年衆院選 ☆新井正則  自民 埼玉  8区       買収
  〃    ☆今野東   民主 宮城  1区       利害誘導
  〃    ☆鎌田さゆり 民主 宮城  2区       利害誘導
  〃     中本太衛  自民 神奈川14区       買収
  〃    ☆都築譲   民主 愛知 15区(比例復活) 買収約束
05年衆院選 ☆五島正規  民主 高知  1区(比例復活) 買収
  〃    ☆松本和巳  自民 千葉  7区       買収
 ※☆は当選

8月30日朝刊

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20070830-00000116-mailo-l14