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2007年08月29日(水) 15時10分

<闇の職安>制限なき犯罪の温床 すぐ返信「女の子襲う」毎日新聞

 名古屋市千種区の派遣社員、磯谷(いそがい)利恵さん(31)が拉致・殺害された事件で、死体遺棄容疑で逮捕された住所不定、無職、川岸健治容疑者(40)ら3容疑者を結び付けたのは、インターネットの闇サイト「闇の職業安定所」だった。闇サイトで募った面識のない仲間と違法行為に手を染める事件は後を絶たず、犯罪の温床になっている一方、サイトへの書き込みの制限は難しいのが現状だ。闇サイトで何が起こっているのか。記者がアクセスしてみた。【影山哲也】
 ■アクセスは簡単
 ネット上に数多く存在する闇サイト。記者は28日、その中の「裏求人」をクリックした。「当社はまぢでがっつり稼がせます」との書き込みが目に飛び込む。内容をメールで尋ねると「電話で」と返信があった。こちらの電話番号を知らせないと、応答できないらしい。番号を知らせると、若い男性から電話がかかった。
 「裏ロム(パチンコの不正部品)取り付けや、携帯電話の飛ばし(他人名義の売買)だね。1日5万円(の収入)だよ」と屈託がない。「今まで一回もミスはない。捕まったら意味ないから」と男性の声は陽気だった。
 この間、約30分。携帯電話を操作する記者の指には、じっとりと汗がにじんでいた。
 ■「犯罪する人」
 1日にアクセスが約3000件あるという「闇の職業安定所」は、今回の事件を受け、閉鎖されていた。記者の取材に対し、サイトの管理者はメールで回答を寄せた。
 それによると、これまで犯罪を想定させる約80の「禁止ワード」を設定し、1日約50件の書き込みを削除してきた。「犯罪は許可していない」と管理者。それでも「『仲間募集』と書き込まれた場合は対処できない」という。
 28日、ある闇サイトに「今日一緒に犯罪してくれるひと」(長野県・20歳)と書き込みがあった。記者が「犯罪って何するの?」とメールしてみると「女の子襲う!」「襲って、持っている物を盗む」との返信が即座にきた。
 ■罪に問えない
 闇サイトをきっかけとする犯罪の増加を受け、警察庁から委託された財団法人インターネット協会(東京都)が昨年6月、「インターネット・ホットラインセンター」を設置した。1年間に約6万件の通報メールを受け、書き込み内容自体が刑法などに触れる9439件を「違法情報」と判断、警察に情報提供し、削除要請した。
 ただ、殺人の依頼や請負の書き込みを禁じる法律はなく、「表現の自由との兼ね合いもあり、規制は難しい」(同センター)という側面がある。闇サイトには今日も不気味な“求人、求職”があふれている。
 【ことば】闇の職業安定所 インターネット上に開設された仲間募集用のサイト。匿名で書き込みができるため犯罪に悪用されやすい。警察に摘発された強盗事件や他人名義の銀行口座の売買、違法風俗店による少女の求人などで利用されていた例も数多くある。現在は類似の闇サイトも多く出てきている。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20070829-00000062-mai-soci