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2007年08月27日(月) 01時23分

制裁金640億円と0円 カルテル「自首」で明暗朝日新聞

 価格カルテルを当局に「自首」して、制裁金の減免を受ける「リーニエンシー制度」に、欧州で注目が集まっている。ライバル関係にある英国の航空2社による運賃カルテルに同制度が適用され、制裁金が約640億円とゼロとに明暗がくっきり分かれたことがきっかけだ。同制度は欧州全体で幅広く採用され、カルテルを抑止する効果が期待されている。

 英国で摘発されたのは、原油価格の高騰に対応するため航空運賃に上乗せされている「燃油サーチャージ」でのカルテル。ブリティッシュ・エアウェイズ(BA)とヴァージン・アトランティック航空が連絡を取り合い、米国路線などの長距離便のサーチャージを往復5ポンド(約1200円)から60ポンドに引き上げたという。

 英競争政策当局OFTが科した制裁金はBAが1億2150万ポンド(286億円)に対し、ヴァージンはゼロ。いち早くカルテルの実態を申し出たヴァージンが減免制度のフル適用を受けた。米司法省もBAに、貨物のカルテルも含め3億ドル(約350億円)を科した。

 関係者によると、ヴァージン社内の法務チームがカルテルに気付いたのは06年初夏。すぐにOFTに電話し、弁護士らが関連書類の提供や詳細の説明に踏み切ったという。OFTの捜査を受けたBAも「全面的に協力する」と表明。積極的な資料提供などを実施したことで減額はされたものの、英国のカルテル事件では最大級となる制裁金を科された。

 英国で減免制度が導入されたのは00年春。世界的人気を誇るサッカーチーム「マンチェスター・ユナイテッド」などのレプリカシャツや私立校の学費といった国民に身近な価格カルテルに、減免制度が適用されてきた。今回は、対象となった航空会社が有名企業だったうえ、制裁金の巨額さが注目を集めた。

 OFTのカルテル調査の副責任者デボラ・ジョーンズさんは「制裁金減免の制度と効果が知れ渡れば、カルテルを結ぶ当事者同士が相手を疑ってかかるだろう。違法な協議そのものが成立しにくくなる」と、抑止効果に期待を寄せる。

 減免制度は欧州全体に広がっている。

 欧州連合(EU)の行政機関である欧州委員会は07年1月、変電所の設備納入で日本の5社を含む10社に7.5億ユーロ(約1200億円)の制裁金を科すと発表した。だがスイスの重電メーカーABBは、2億ユーロ超のはずの制裁金がゼロ。当局への通報の見返りだ。エレベーターのカルテルでも、欧米日の5企業グループへの制裁金が計9.9億ユーロ(約1580億円)にのぼったが、いくつかの現地法人は制裁金を免れている。

http://www.asahi.com/business/update/0827/TKY200708260139.html