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2007年08月25日(土) 21時03分

国際偽装結婚「偽見合い」1日30人 出稼ぎ隠れみのに 朝日新聞

 福岡市の国際結婚相談所「ブライダル祐」が結婚ビザを不正取得しようとした事件で、この相談所が複数のフィリピン人を来日させるため、日本人との偽装結婚を繰り返し仲介していた疑いが強いことが福岡県警の調べでわかった。「伴侶」を紹介された日本人の中には、1日に30人と見合いをさせられた女性や、多額の手数料を取られた高齢の男性もいた。いずれも実態的な結婚生活はなく、出稼ぎのための隠れみのだったとみられる。相談所側は日本人だけでなく、フィリピン人からも稼いだカネの一部を取り上げていたという。

 福岡市の40代の女性は05年夏、ブライダル祐を訪ねた。応対したのは、阿部信博(53)とフィリピン国籍の妻(44)の両容疑者=公正証書原本不実記載、同行使容疑などで逮捕=だった。

 「日本人よりフィリピン人の方が優しくて働き者」。阿部容疑者はフィリピン人男性との「見合い」を強く勧めた。渡航費や滞在費を支払うとまで言われ、女性はフィリピン・マニラに行くことを受け入れた。

 現地では、郊外の一軒家に案内された。応接室のいすに腰掛けて待っていると、別室に集まっていた男性が数分交代で入ってきた。簡単な英会話での「見合い」を約30回繰り返した。

 「ジェス」と名乗る35歳くらいの男性にひかれた。翌月、現地で結婚式を挙げ、婚姻届を出した。

 ジェスは06年1月に来日。工事現場や焼き鳥屋でアルバイトした。10万円近い月給のほぼ全額を本国に送り、2人の生活費は女性が払った。 4カ月後、女性が仕事を終えて帰宅すると、姿が消えていた。その後、関東に住む実姉のもとに身を寄せているらしいが、本人とは連絡が取れていない。

 「ジェスは結局、日本に来たかっただけ」

    ◇

 ブライダル祐が絡んだこうした国際結婚について、福岡県警は30組前後を把握。中には、紹介料220万円を払って結婚しながら女性と同居できなかった70代の男性や、自分が知らない間に「妻」が来日してホステスをしていた30代の男性もいた。「妻」はブライダル祐で寝起きしながら、稼いだカネの一部を阿部容疑者に納めていたという。

 厚生労働省によると、05年の国際結婚は約4万1400組。結婚全体の18組に1組の割合だ。10年前に比べると、1.5倍に増えた。

 一方で、警視庁は今年6月、中国人や韓国人に偽装結婚相手を紹介したとして、都内のコンビニエンスストア経営者ら14人を逮捕。兵庫県警も同月、偽装結婚を手助けした疑いで、大阪府内の行政書士を逮捕するなど、摘発例は各地で相次いでいる。

 警察庁は偽装結婚の摘発総数は把握していないが、外国人の女が歓楽街などで働くために、日本人と実態のない「夫婦」になっているケースは少なくない。だが、「夫婦ではない」ことを立証するのは容易ではなく、「摘発されるのは氷山の一角」との指摘もある。

http://www.asahi.com/national/update/0825/SEB200708250011.html