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2007年08月20日(月) 00時00分

危機感が生んだ読むべき本のリスト朝日新聞

 京大文学部に入る学生と言えば本好き、「本の虫」と思うものだが、大きな誤解らしい。西洋古典学を担当する中務哲郎教授(60)が新入生に西洋文明の源流「ギリシャ神話」で読んだ物語を書かせてみると、ほとんど読んでいない。3年前に公開の映画「トロイ」を見たと書いてあると、ほっとする有り様。

 専攻コース振り分け前にする聞き取りで、読むべき本をあまりに読んでいないことに気付いていた。2001年夏、同じ思いの同僚と語らって読むべき西洋文学リストを作ろうと決めた。西洋文学系教官はほぼ全員参加で推薦図書を決め100文字余りの紹介文を書いた。小冊子にして翌年春から新入生に配り、ネットでも利用できるようにしたのが「西洋文学この百冊」(http://edb.kulib.kyoto-u.ac.jp/wl/)。他の大学からも引き合いが相次ぎ、冊子は品切れ状態になっている。

 リチャード・ライト「アメリカの息子」評は「ぼくが大学一回生のときに、生まれて初めて英語で最後まで読み切った小説でもある。この小説のせいで、今ぼくはこんな商売をしている」と書かれるなど、1冊の本に対する熱い思いが伝わる。

 文学に対する関心を高めようと現役作家による集中講義も実施したが、本が読まれない現状を変えるのは容易ではないようだ。問題は文系だけではない。「理系でも湯川秀樹の名を知る新入生は10人に1人と聞きます」と中務教授。

http://www.asahi.com/kansai/entertainment/webtu/OSK200708200014.html