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2007年08月15日(水) 03時07分

<資金管理団体>4閣僚が休眠状態 規正法骨抜きも毎日新聞

 安倍晋三首相と15閣僚(民間出身除く)のうち、4人の資金管理団体が休眠状態か、実質的な活動をしていないことが毎日新聞の調べで分かった。活動の主体を政党支部や他の関連政治団体に移している形。事務所費など一連の問題を受け、政府は先の国会で資金管理団体に限って5万円以上の経常経費に領収書添付を義務付ける法改正を行ったが、その活動が形骸(けいがい)化していれば規制の意味はない。「政治とカネ」の透明化には政治団体全体の規制が必要なことを示す結果となっている。
 資金管理団体は政治資金規正法で政治家が一つ持つことを認められ、代表は政治家個人が務めるなど、政治家の「顔」ともいえる。現在、政治団体は約7万団体あり、うち資金管理団体は約1万(地方議員含む)。
 最も新しい05年分の政治資金収支報告書によると、長勢甚遠法相、山本有二金融担当相、柳沢伯夫厚生労働相、若林正俊環境相兼農相の各資金管理団体は、活動に不可欠な経常経費支出がゼロか、わずかしかない。
 このうち長勢法相の「長政会」の経常経費支出は01年以降、人件、光熱水、備品・消耗品の各費が皆無で、05年は事務所費2415円だけ。政治活動費支出は他の関連政治団体への寄付のみで、イベントや機関紙の発行など一般的な政治活動はしていない。山本金融担当相の「新政経懇話会」は00年に政治活動費の支出が途絶え、経常経費も急減。02年の事務所費945円を最後に経常経費が支出されていない。
 資金管理団体に活動実態がないのではと質問したところ、長勢事務所と山本事務所は「経常経費は実際に支出した経費を計上したものです」などと同一のコメントをし、団体の活動実態について具体的に説明していない。
 柳沢厚労相と若林環境相兼農相は、明確に休眠状態にあることを認めている。柳沢厚労相の「伯政会」は01年以降、政治活動費の支出が全くない。柳沢事務所によれば、政治資金規正法改正で企業献金が政党のみに限定されたため、自民党支部と後援会に活動の中心を移したという。
 「若林正俊政治経済研究会」は00年以降、光熱水、備品・消耗品、事務所の各費がゼロ。若林事務所も「資金管理団体への企業・団体献金が禁止されて以後、事実上休眠状態」としている。【日下部聡、苅田伸宏】
 ◇政治団体少なくとも41 長勢甚遠法相
 4人の閣僚の資金管理団体が事実上、休眠状態であることが発覚した。このうち長勢甚遠法相(衆院富山1区)は、資金管理団体「長政会」を含め政治団体を少なくとも41団体持つ。参院選の大敗を受け、自民党はすべての政治団体に1円からの領収書添付を義務付ける法改正議論が行われているが、党内からは事務作業の増大を理由に反対する声が強い。複数の政治団体を持つ政治家が事務処理を複雑にしている状況もあるようだ。
 長勢法相の政治団体数(総務省、富山県選管届け出計)の41は、4人の中では最も多い。
 05年分の政治資金収支報告書によれば、長勢法相の関連政治団体計11団体が富山市内の同じ一戸建ての建物に事務所を置いている。
 また同県魚津市の事務所にも別の6団体が同居。関連政治団体の大半は、地元秘書が会計責任者や事務担当者を務めているが、「興論サークル」「月曜クラブ」など、名前だけでは長勢法相の関連団体とは分からないものも少なくない。
 資金管理団体の長政会も他の関連政治団体2団体とともに東京都千代田区のビルを所在地としている。
 団体間では複雑な寄付のやり取りがなされており、同じ住所の団体間での寄付もある。05年の長政会の政治活動費支出800万円のうち、700万円は「同居」している「新時代政策研究所」への寄付していた。
 政治団体を多数持つことや、複雑な資金の流れについて事務所は「各団体は、それぞれ独立して活動している」「法にそって、政治活動を行う政治団体間において寄付がなされているものと承知しています」などとしている。【日下部聡、苅田伸宏】
 ◇金丸信・元自民党副総裁の巨額脱税事件きっかけに
 資金管理団体の制度は95年にスタートした。93年に発覚した金丸信・元自民党副総裁の巨額脱税事件がきっかけだった。00年からは資金管理団体への企業・団体献金が禁止された。
 法改正が議論された当時の山花貞夫政治改革担当相は、その目的について「(政治資金を集める団体を)思い切って一つにして、それを見ればわかる、国民の監視の目というものをそうした格好で受けていくということにした」(93年10月29日の国会答弁)と述べている。
 政治家が自らが関係する政治団体の中から資金管理団体を指定するメリットは、自らその団体に寄付をする場合、ほかの政治団体より寄付額の上限が緩いなどの「特例」があること。今年6月の法改正で、5万円以上の経常経費(人件費を除く)の支出に領収書の添付が義務づけられ、不動産の取得・保有が禁じられた。
 しかし、個人からの献金は資金管理団体でも、その他の政治団体でも受けられる。さらに、企業・団体献金は、政治家が代表を務める政党支部で受けることが可能だ。
 「受け皿」を一本化し、透明化を図るという設立された当時の精神は忘れ去られていると言える。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20070815-00000013-mai-soci