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2007年08月14日(火) 23時09分

松下製電池4600万個回収 ノキア、携帯に搭載朝日新聞

 携帯電話機世界最大手、フィンランドのノキアは14日、同社の携帯端末に搭載した松下電池工業製のリチウムイオン電池4600万個に発熱の恐れがあり、消費者の求めがあれば無償で交換に応じる、と発表した。両社によると、松下電池の製造ラインの不具合が原因で回路がショートするとみられる。大規模な回収は世界の利用者に影響し、交換費用の負担や信用力の低下で、松下電池や親会社の松下電器産業の経営に影響しそうだ。

電池「BL−5C」が使われているノキア製の携帯電話。ボーダフォン(現ソフトバンクモバイル)が日本で発売した 松下電池工業製の電池「BL−5C」。赤い枠で囲った部分に、ノキアのウェブサイトで照会できる製造番号が印刷されている

 対象の電池はノキアブランドの「BL—5C」で、複数の電池メーカーで3億個以上生産された。うち回収対象の松下製品は、05年12月〜06年11月に大阪府守口市の本社工場で製造。この電池を搭載した端末は世界中に出荷されており、日本ではNTTドコモ、ソフトバンクモバイル(旧ボーダフォン)などから約32万台販売され、16万〜17万台が現在も稼働しているとみられる。

 ノキアなどによると、電池の異常発熱などの不具合が世界で約100件報告された。日本でも2件あり、発熱で床やベッドが焦げたという。事例はすべて充電中で、深刻なけがなどの報告はなく、充電器などの周辺機器にも影響がない、としている。

 松下電器や松下電池の説明では、不具合のある電池は、製造工程でプラス電極とマイナス電極を隔てる絶縁シートが破れ、両極が接触している可能性があるという。不具合は全体の1%未満とみられるが、充電時に大きな電流が流れるとショートし、最高数百度まで過熱して携帯本体のプラスチックが溶けたり、内部でガスが発生して電池パックが膨張し、最悪の場合パックが裂けたりする可能性もある。

 06年11月に効率化などのためラインを改修したことで、製造工程の不具合は解消されたが、その時点では「不具合が発生していることを把握できていなかった」(松下電池広報)としている。

 ノキアは「問題が起きるのは、とてもまれなケース」としつつも、消費者に注意を呼びかけ、松下とともに規制当局に協力して調査を進める方針。ノキアは「不具合情報が増えてきたので、顧客の安全を考えて素早く対応した」(広報担当)と強調している。

 これに対し、電気製品の安全性を監督する経済産業省内には「悪質な報告義務違反とまでは言えないかもしれないが、世界で事故が100件起きているのに、夕方に事実を公表するなど消費者をなめているのではないか」と厳しい見方がある。今後、ノキア、松下の対応が妥当だったか問われる可能性もある。

 リチウムイオン電池では昨年、ソニーのパソコン向け電池に過熱や発火の恐れがあり、最終的に960万個を回収。三洋電機も、三菱電機製携帯電話用電池に過熱や破裂の恐れが生じ、130万個を回収している。今回の松下製電池の回収規模は、それを大きく上回る。相次ぐ大規模な製品の不具合は、日本メーカーに対する信頼も大きく傷つけかねない。

 ノキアは、携帯電話機の世界シェアの3割超を握る最大手。交換費用は、ほぼ全額を松下電池が負担するとみられ、200億円超まで膨らむ可能性もある。

http://www.asahi.com/business/update/0814/TKY200708140389.html