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2007年08月12日(日) 17時22分

保護司 後継者の人材発掘強化を 連盟が全国に通知毎日新聞

 後継者不足が問題になっている保護司を確保しようと、社団法人「全国保護司連盟」(全保連、東京都)は、各団体から広く人材を募る取り組みを強化するよう全国の保護司会に通知した。保護司個人の人脈に頼ってきた人材確保が行き詰まりを見せており、「地域の力」でスカウトする仕組みが必要と判断した。全保連は候補者推薦のため2年前に全国約70の地域で試験的に導入した地元有識者による専門委員会を倍以上の約160に増やす計画。法務省も効果を見極めた上で全国的な導入に向け検討を進める。
 保護司会は全国に約880。法律上の定員は5万2500人だが、今年1月現在の保護司の数は4万8564人(定員に占める充足率92.5%)。各保護司会の努力で後継者の確保が進んだ時期もあったが、法務省が04年、76歳以上の保護司を再委嘱しない方針を決めたことから退職者が相次ぎ、充足率はここ数年低下。また、49歳以下が占める割合は5.7%で、若手が少ないのも課題の一つになっている。
 これまで保護司の発掘は、各保護司の個人的つながりで行われるケースがほとんどだった。法務省が05年に公表した実態調査によると、約7割が先輩の保護司に勧められて就任しており、自分から希望した人は0.9%に過ぎない。知人に就任を依頼して断られるケースは都会ほど多く、人口30万人以上の地区では約44%の保護司が断られた経験があるという。
 近年、地域の人間関係が希薄になり、後継者を見つけることが困難になったため、定員割れが常態化。全保連と法務省保護局は「保護観察制度を支えているのは保護司。後継者不足が続くようでは制度自体が揺らぐ」と危機感を募らせ、05年、全国約70地区に後継者を推薦する「保護司候補者内申委員会」を試験的に設置した。内申委の規模は地域で異なるが、行政OBや民生委員、地域のスポーツ・文化団体関係者など5、6人から十数人で構成される。
 内申委を設置したモデル地区では新規の委嘱者が軒並み増え、05年6月からの1年半で計689人に上った。それ以前の1年半に比べ、約20%増の成果だった。これを受け、全保連は今月、犯罪件数が多く保護司の負担が大きい地域を中心にモデル地区を約160に増やすよう通知した。
 小畑哲夫・全保連事務局長は「単に委嘱者が増えただけでなく、保護司の活動に対する地域の理解も進んだと聞く。試行にとどまらず、将来的には全国で実施する正式な制度にしたい」と話している。【坂本高志】
 【保護司】 法相の委嘱を受け、保護観察中の少年や元被告、刑務所から仮出所中の元被告らの更生を助けることを主な目的とする非常勤の国家公務員。無給のため実質的には民間ボランティアで、任期は2年。保護司法によると、地域での社会的信望、熱意と時間的余裕を有することなどが保護司になる条件とされる。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20070812-00000015-maip-soci