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2007年08月06日(月) 22時03分

イラク軍将校、わいろ受け取りテロ黙認 腐敗深刻朝日新聞

 イラクの治安を担うイラク軍の腐敗が深刻になっている。朝日新聞バグダッド支局が入手した軍内部の報告や関係者の話から、将校が武装勢力からわいろを受け取って自爆テロを「黙認」しているなどの実態が明らかになった。治安権限の移譲を目指す米国とイラク政府に対し、軍内部から「最優先すべきは腐敗の一掃だ」との声も聞かれる。

 バグダッド中心部を流れるチグリス川に架かるサラフィヤ橋で4月12日、トラックが自爆して少なくとも10人が死亡、橋は大破して通行不能になった。川で東西に分かれているバグダッドで橋は市民生活の命綱で、市民に衝撃を与えた。

 イラク軍関係者によると、このテロには橋の警備を担当する部隊指揮官の大佐が関与していた。スンニ派アルカイダ系組織から4万ドルを受け取り、検問所で大量の爆薬を積み込んだトラックの通行を許したという。

 さらにこの大佐は、非アルカイダ系過激派のイラク・イスラム軍やシーア派の反米強硬派マフディ軍など複数の勢力からも数千〜数万ドルの現金を受領。見返りとして兵士配置の手薄な地域をつくったり、検問所を移動させたりしてテロ攻撃をやりやすくしていた。

 バグダッドのサドリヤ市場でトラックが自爆し、127人が死亡した4月18日のテロでは、別の指揮官がスンニ派過激派から2万ドルを受領。トラックの検問所通過を黙認したことが内部調査で分かり、拘束された。

 金銭受領にとどまらず、武装勢力と国軍兵士を「掛け持ち」している例すらある。シーア派の少佐は、兵士の給料を乗せた装甲車を襲撃。自ら所属するマフディ軍に横流しした。配下の兵士17人を武装勢力が待ち伏せする地点に向かわせ、殺させたスンニ派の大尉も。いずれも発覚して軍に拘束されたという。

 あるイラク軍将校によると、軍の腐敗は91年の湾岸戦争後に深刻になった。経済制裁などで社会全体が困窮するなか、幹部らが部下の給料をピンハネするのが横行。さらに03年のフセイン政権崩壊後は贈賄に力を入れる武装勢力などが現れ、腐敗が広まったという。

 米国とイラク政府は、治安部隊の育成と治安権限の移譲を目指す。軍は内部で摘発を進めているが、公表していない。あるイラク軍将校は「上層部が把握しているのは氷山の一角だ。実態を公表したら国民の信用を失いかねない」と話した。

http://www.asahi.com/international/update/0806/TKY200708060340.html