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2007年08月04日(土) 15時03分

<課長脅迫>埼玉・羽生市が「事件にしないで」と上申書毎日新聞

 埼玉県羽生市のし尿処理を巡り、市の担当課長が同市内の清掃会社の元社長(58)=脅迫罪で罰金30万円が確定=に「長崎市長と同じようになるかもしれないぞ。ピストル向けるぞ」と脅された事件で、市が「脅迫事件として扱われることは本旨ではない。脅迫された当事者も本意としていない」とする、捜査中止を求める上申書を県警羽生署に提出していたことが分かった。行政対象暴力を封じ込めようという世論が高まる中、市の消極的な姿勢への批判が出るのは必至だ。
 事件は5月31日、元社長が市汚泥再生処理センターの通常の処理能力を上回るし尿処理を拒まれたことから、市役所の駐車場で課長を脅した。課長は後日、個人として同署に被害届を出した。
 毎日新聞が情報公開請求で入手した資料などによると、市は6月22日、羽生署に河田晃明市長名で上申書を提出。「(元社長にこうした発言を)厳に慎むよう戒め、(元社長は)神妙な態度で深く反省し、謝罪したことから和解に至った」として事件化しないよう求める内容だったが、同署は同27日、元社長を脅迫容疑で逮捕した。
 同署は「書類は受け取ったが犯罪構成要件に該当する事案。適正な捜査を行った」としている。
 一方、市の議事録などによると、副市長、総務部長、経済環境部長らが同4日、対応を協議。「言葉による行政対象暴力にあたる」と判断しながら、「業務を停止すると市民生活に重大な支障になる」ことを理由に会社に対する処分を厳重注意にとどめ、元社長らを呼んで厳重注意し、元社長も謝罪したという。
 しかし、市内の複数のし尿処理業者は「一業者が許可を取り消されても他の業者がいる。市民生活に影響はなく、市の態度は理解できない」と話している。
 河田市長は毎日新聞の取材に「厳重注意という厳しい行政処分を下し、本人も反省している。総合的な判断で事件化する必要はないと考え、上申書を出した」と話している。【浅野翔太郎】
 ◇時代に逆行した話
 ▽元日弁連民事介入暴力対策委員長の深沢直之弁護士の話 全国の自治体が行政対象暴力の排除を目指す中、自治体が警察の捜査に口出しするなど、聞いたことがない。時代に逆行したとんでもない話だ。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20070804-00000038-mai-soci