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2007年08月03日(金) 00時00分

ごね得読売新聞

 日本には「無理が通れば道理が引っ込む」(Where might is master, justice is servant.)のことわざがありますが、ごねてでも言い分を通すのは、欧米では常識です。

 相手に譲歩させた分、「ごね得」になりますが、この表現にぴったりなのが grease for the squeaking wheel。

 「キーキーときしむ音を立てる車輪は潤滑油を塗ってもらえる」が原義で、「ごね得」のニュアンスが伝わります。

 実際は a case of を伴って次のように使います。 The president gave complaining employees a slight raise in salary. It was probably just a case of grease for the squeaking wheel.(社長はいつも不平を言っている社員の給料を少し上げてやったが、ああいうのをごね得と言うんだろうな)

 お互い口に出さなくても理解することを求める日本社会に対して、様々な民族が入り交じり、価値観が多様な米国社会などでは、自分がどういう人間なのか、何を考えているのかを、常に口に出して言うことが求められます。

 そのため、 The United States was founded on a complaint.(米国は苦情の上に建てられた)、Make your complaints heard.(不平は聞こえるように)などの表現も生まれるわけです。

 また、 grease for the squeaking wheel 以外の平易な単語を使った例を見てみましょう。

 「あいつのごね得に終わった」なら He made so much trouble that he got what he wanted.

 ところで、同じ主張や要求を通すやり方でも、泣いて相手の同情心を動かす「泣き落とし」はどうでしょうか。

 tearful appealなどと直訳しても意味は通じますが、「泣き落とし」が必ずしも涙を伴うものとは限りません。こんな時は「心の琴線」を意味する heartstringsを用いた pull at someone’s heartstrings が使えます。 She couldn’t resist the salesman’s pitch. He pulled at her heartstrings.(彼女はセールスマンの泣き落としに負けて、ついに買わされた)

 また、「泣き落とし」につきものの「お涙ちょうだいの話」なら、 Don’t be taken in by her sob story.(彼女の泣き落としにはだまされるな)です。(石田格也記者)

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