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2007年08月03日(金) 12時01分

偽装:さくら保険金殺人/中 部下への洗脳 /栃木毎日新聞

 ◇「指示に従って殺害」 際立つ献身的な働きぶり
 「野沢(容疑者)は、小林(容疑者)に洗脳されているようなもの」
 自殺を偽装、妻はるみさん(当時41歳)を殺害したとして逮捕された、小林広容疑者(58)経営の自動車修理販売会社「オートサービス・コバヤシ」。かつて同社に勤務した男性元社員は、こう打ち明けた。
 はるみさん殺害事件では、小林容疑者のほか、同社従業員の野沢正人容疑者(28)と小林容疑者の古い友人の土木作業員、郡司喜一容疑者(63)が殺人容疑で共に逮捕された。
 「(小林容疑者の)指示に従い殺害した」。保険金目的の物置兼住宅への放火事件が、同じく保険金目当ての殺人事件に発展したきっかけは、野沢容疑者の供述だった。
 野沢容疑者は旧喜連川町(現さくら市)出身。県内の高校、専門学校を経ていったん東京に出た。しかし、Uターンし同社に勤務。一方、元社員もハローワークで仕事を見つけ03年10月に入社、共に働き始めた。
 元社員の入社当時、同社従業員は、野沢容疑者も含め計5人いた。しかし、従業員による自動車部品の横流しなどが発覚し、同容疑者以外は解雇されたという。元社員は今も、「野沢(容疑者)だけ会社に残ったのは疑問だった」と話す。
 関係者によると、野沢容疑者は20代で取締役に就任する。小林容疑者の運転手を務めるなど、献身的な働きぶりが、元社員には印象的だった。夜中であっても小林容疑者に呼び出され、飲み屋に迎えに出向いたという。
 一方、野沢容疑者と共に、はるみさん殺害の実行役とされる郡司容疑者は逮捕前、毎日新聞の取材に応じていた。
 「気むずかしい面はあるが、地域への貢献は大きい。(さくら市野球連盟の役員で)熱心に少年に指導していたし、世話になった人間は多くいる」。小林容疑者を評価する一方、はるみさん殺害の疑惑について「冤罪(えんざい)とは言わない。本当のことかもしれない。それなら罪を償ってほしい。おれだって悲しいんだ」と述べ、揺れる心情をのぞかせていた。
 郡司容疑者の自宅もやはり今年1月、全焼。保険金2000万円を掛けていたが、保険会社に支払いを拒否された。保険は火災直前の06年12月に加入したばかり。家を失い、生活費に事欠く同容疑者に小林容疑者は80万円を貸していたという。
 「放火では?」。疑問をぶつけた。即座に「先祖から引き継いだもの。そんな大切な家は燃やせない」と答えていた。自身が逮捕される可能性については、「やっていない。関係ない」。繰り返すばかりだった。

8月3日朝刊

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20070803-00000074-mailo-l09