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2007年07月29日(日) 01時52分

消費者金融 規模拡大だけでは描けぬ将来像(7月29日付・読売社説)読売新聞

 規制強化に苦しむ消費者金融業界が、再編に動き出した。生き残りには、規模拡大だけでなく、新たなビジネスモデルへの転換が求められよう。

 消費者金融3位のプロミスと5位の三洋信販が、経営統合することで合意した。プロミスが株式公開買い付け(TOB)で三洋信販を完全子会社化する。実現すれば、貸付金残高2兆円規模の業界首位グループが誕生する。

 両社に統合を決断させたのは、昨年末に成立した改正貸金業法による、業界の経営環境の深刻化だ。

 改正貸金業法には、貸し付け上限金利の引き下げや、融資額の総量規制などが盛り込まれた。2009年末をめどに実施される。従来のような高金利での融資ができなくなるため、業界各社は融資の申し込みに対する審査を厳しくし、貸付残高は急減している。

 顧客がこれまでに払い過ぎた利息の返還請求も、膨らんでいる。引当金の積み増しを迫られ、大手5社は07年3月期にそろって大幅な赤字決算に転落した。

 市場縮小と利益率低下への対応には、店舗や人員の削減では足りず、統合による経営基盤の強化が必要になった。

 プロミスの神内博喜社長は、記者会見で「規模の確保が急務だ」と危機感を示した。今後も、他の大手や中小業者の間で、再編が続く可能性が大きい。

 だが、規模拡大を競うだけでは、業界の将来展望は開けないだろう。

 低金利で調達した資金を、高金利で貸し付け、大幅な利ざやを稼ぐ。無人契約機などで借り入れを容易にし、融資量を拡大する。そんな消費者金融のビジネスモデルは、もはや成り立たない。

 低金利でも融資できる優良顧客は、銀行など他の業態とも奪い合いになる。その中で、どんな商品やサービスの提供で活路を見いだしていくのか。各社は知恵を絞らねばならない。

 改正貸金業法の成立を受け、テレビCMの放送時間の制限など、新たな自主規制ルールの検討も始まっている。「融資さえすればいい」という従来の業界の姿勢を改めるうえで、実効性のあるものにする必要がある。

 消費者金融業者が融資先を絞れば、借りたくても借りられない人が増える。ヤミ金融などに走らぬように対策を講じるのは、行政の責任だ。

 政府は、4月に多重債務問題改善プログラムを策定し、全国500超の市町村への相談窓口設置などを打ち出した。自治体が円滑に体制を整えられるように、国は、必要なら予算措置を含め、しっかりと後押しするべきだ。

http://www.yomiuri.co.jp/editorial/news/20070728ig91.htm