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2007年07月25日(水) 03時00分

グッドウィル違法残業…労使協定期限切れ、再締結できず読売新聞

 グッドウィル・グループの人材派遣会社「グッドウィル」(東京都港区)が、残業のルールを定める労使協定の結び方が不適切だとして厚生労働省から再締結するよう指導を受けたものの、その後の手続きの遅れで、今月から一部の事業所で協定のない状態になっていることがわかった。

 こうした事業所の中には、協定のない状態で従来通り社員や派遣スタッフが残業しているケースもあり、労働基準法違反の疑いが出ている。同社を巡っては、二重派遣など他の労働法令違反の疑いも浮上しており、厚労省は、本格調査に乗り出す方針を固めた。

 厚労省から不適切と指導を受けた労使協定は、労働基準法36条に基づいて残業の許容範囲を労使間で決め、過剰な残業に歯止めをかける目的で締結されたもので、一般には「三六協定」と呼ばれる。

 労基法では、会社が三六協定を結ぶ相手は労働組合や労働者による投票などで選出した労働者代表でなければならないと定めているが、同社ではこれまで会社側が指名した社員らを代表として協定を結んできた。このため、厚労省は、正規の手続きで労働者代表を決め、協定を再締結するよう指示。同社は6月初めから、全国853事業所ごとに再締結の準備を始めていた。

 ところが、各事業所の足並みがそろわず、新たな協定書を労働基準監督署に提出しないまま旧協定の期限(提出後1年間)が6月末で切れ、今月から協定のない状態となった事業所が続出。関係者によると、これらの事業所の下にある支店で、社員や派遣スタッフに従来通り残業をさせているケースがあるという。

 東日本の支店に勤務する社員によると、地区本部の統括部長らは毎日午後8時ごろ、各支店に電話して社員が勤務しているかどうかを確認するなどしているといい、「残業は半ば強制的」と証言する。「午後9時より早く帰ることはまずなく、休日は年に10日程度。残業は今も日常的に行われている」とも話している。

 派遣スタッフも同様で、協定のない首都圏の支店の派遣スタッフは今月、既に20時間以上残業した。

 同グループ広報IR部は「ぎりぎりまで行政に相談し、指導を受けた結果、手続き的な遅れが生じた。協定締結を鋭意進めており、間もなく完了する見込みだ」と説明している。

 労働時間などの問題に詳しい浜村彰・法政大教授(労働法)は「自らの不手際で三六協定を結んでいない状態を招いたばかりか、違法な残業をさせており、法令順守の手本を示すべき大企業とは思えないずさんな状態だ」と指摘している。

http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20070725i101.htm?from=main1