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2007年07月22日(日) 12時51分

談合関与ゼネコンを指名停止せず 渋谷区と立川市朝日新聞

 防衛施設庁発注工事の談合事件に関与したゼネコン各社に対し、東京都渋谷区は今月、指名停止を見送り、立川市も同様に先送りにした。ともに大型公共工事の発注を年度内に予定しており、「大手各社を入札から排除すると、重要な工事の入札に競争原理が働かない恐れがある」という。談合根絶の機運が全国で高まる中の異例の対応。両市区は「住民の利益を考えた苦渋の決断」としている。

 防衛施設庁の談合事件では大手ゼネコンを含む56社が6月20日、公正取引委員会から排除措置命令を受けた。国土交通省は6日、過去最多の55社を1〜4カ月の指名停止にし、全国の自治体も相次いで指名停止にしている。国交省によると、自治体が独自の判断で指名停止にしないことは「非常に珍しい」という。

 渋谷区は、小学校跡地に建設を計画している複合施設の入札に際し、談合関与企業の指名停止を見送った。

 複合施設は音楽ホールを備え、施工には高度な防音技術が必要という。同区は「大手ゼネコンしかできない工事。談合企業をすべて指名停止にすれば、入札が競争にならない。また、指名停止が終わるまで入札を延期すれば、工事が大幅に遅れ、区民の利益を損なう」と説明する。

 立川市は、新庁舎建設工事の入札に大手ゼネコン各社を参加させるため、指名停止の判断を先送りした。入札終了後の来年1月、指名停止にするかどうか判断する予定という。

 同市は「新庁舎の工事には高度な技術が求められ、大手ゼネコンの入札参加が必要。指名停止の基準を見直し中ということもあり、当面の先送りを決めた」と言う。

 自治体の指名停止は、自治体それぞれの要綱や要領に基づいて裁量行為をおこなっており、建設業法に基づく処罰としての行政処分とは異なる。

 防衛施設庁談合の指名停止をめぐっては、各社の指名停止が終わるまで入札を延期する自治体も相次ぐ。「入札に参加するゼネコンが1、2社しか見込めず、入札の競争性が確保できないため」という。

 ただ、こうした入札延期は、不正業者への制裁としての指名停止の意義を自治体みずから否定することになりかねないうえ、工事が遅れ、住民に不利益をもたらす懸念も残る。

http://www.asahi.com/national/update/0721/TKY200707210346.html