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2007年07月21日(土) 06時25分

年金ミス、総務省が50年放置 行政監察で問題視朝日新聞

 年金記録問題で、行政管理庁(現在の総務省行政評価局)が1958年度の行政監察で管理のずさんさを指摘していたことが分かった。これまで政府は問題を認識したのは64年としてきたが、その6年前に本格的な調査があったことになる。その後、再調査などの対応は行っていなかった。同局は「年金記録問題検証委員会」の事務局。年金記録問題の原因や責任の所在を検証する総務省も対応が問われそうだ。

 行政監察は、現在の行政監視・評価。厚生年金保険事業を対象にしたもので、報告書は59年8月にまとめられた。

 報告書によると戦後の年金記録の台帳は未記入や誤記などが多く、50年から57年にかけて整備された。だが、整備後も「なお整備不能、整備不完全、あるいは不明の台帳」が「少なからず残されている」としている。

 行政管理庁は台帳整備について「一層の努力を払う要がある」と勧告。これに対し、厚生省(現在の厚生労働省)は「記録全部を検査することは、非常に困難であるので、将来保険給付の発生に際して再計算し、保険給付の裁定の確実を期することとしたい」と回答した。最近まで厚労省が「年金支給時の申請を待って対応する」としてきた姿勢に通じるものだ。

 報告書は当時始まっていた記録の機械管理についても「事務管理、作業管理が十分確立、実施されていない」状況だと指摘。「無理な作業処理を行うため、勢いミスが多く」生じるとしていた。

 こうした台帳整備や機械管理のあり方が、その後の「宙に浮いた」5000万件の問題などにつながった可能性がある。

 政府は6日に閣議決定した答弁書で、年金記録問題を認識した時期について、64年9月1日付の社会保険庁の文書を根拠に「64年以前から記録事故があったものと認識している」としていた。だが、58年度の行政監察には触れていなかった。

 総務省の伊藤孝雄審議官(行政評価局担当)は「朝日新聞社の指摘を受けるまで報告書は知らなかった。年金記録について調べたのは、この1度だけだ。結果としてやってこなかったことは認める。今の時点で頑張るしかない」と話している。

http://www.asahi.com/politics/update/0720/TKY200707200572.html