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2007年07月15日(日) 03時00分

現行5%の法定利率、引き下げへ…逸失利益算出などに影響読売新聞

 法務省は民法で定める法定利率を、現行の年5%から引き下げる方針を固めた。

 低金利時代を踏まえ、市中金利との乖離(かいり)を是正するのが狙い。引き下げ幅や変動型か固定型かなどについて検討を進め、早ければ2009年の通常国会で法改正したい考えだ。

 法定利率は、民法404条で、「利息を生ずべき債権について別段の意思表示がないときは、その利率は、年5分とする」と規定され、金銭貸借などの契約で、利息をつけることになっているのに、具体的な利率が決まっていない場合に適用している。損害賠償金など法律上発生した債権に加算される遅延損害金、不正利得を悪意で得た受益者がその利得を返還する場合につける利息にも適用される。

 企業間の特許侵害など巨額の損害賠償を求める民事裁判では、金利差が大きいため、賠償金を早く手にするより、法定利率を適用した遅延損害金を受け取る方が有利なため、権利者側が意図的に交渉を長引かせる弊害も出ている。

 死亡交通事故の被害者が生涯で得られたはずの逸失利益を算出する際に、決定額は法定利率で運用されたと仮定し、その利息分を支払い時に差し引いている。

 例えば、未成年の死亡交通事故の被害者が18歳から49年間働き約1億3800万円を稼ぐと仮定した場合、年5%の利息分を差し引いて3310万円のみを支払うとの判決が出ている。

 適用利率が低ければ、遺族が受け取る賠償金は多くなるため、識者や遺族の間には「低金利時代なのに年5%もの高利運用の見通しは立たず、被害者に厳しすぎる。現状との乖離を見直すため、法定利率の見直しが必要だ」の声がある。

 また、利息制限法の上限を超える高金利で支払った「過払い金」の返還に利息がつくかどうかが争われた訴訟では、13日の最高裁判決で、貸金業者が悪意で得た不正利得に当たるとして、年5%の法定利率を適用すべきとの判断を示した。

 法定利率は、1896年の制定時から1世紀以上も改正されていない。

http://www.yomiuri.co.jp/politics/news/20070715i101.htm