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2007年07月15日(日) 01時42分

中国産品 これでは世界の消費者が見放す(7月15日付・読売社説)読売新聞

 中国産品の安全性への懸念が世界規模で強まっている。

 生命にもかかわる有害産品の大量輸出は、中国経済そのものにも悪影響を及ぼすだろう。

 米国では今春、中国産原料を使ったペットフードで動物が中毒死し、騒ぎとなった。それ以降、菓子類、練り歯磨き、野菜、ダイエット食品、魚介類、化粧品、おもちゃなどから、次々と有害物質が検出された。

 パナマでは中国産原料を含むせき止め薬を服用し、100人以上死亡していたことが最近分かった。日本、オーストラリア、欧州連合(EU)などでは、有毒物質入りの中国製歯磨き粉が見つかり、回収処分された。

 中国産品の安全問題は今に始まったことではない。だが、最近の中国製品による被害の拡大ぶりは、目に余る。

 中国では、利潤最優先の不正行為が年々深刻になっている。これが、被害を拡大させている最大の要因だ。信じられないような事件が頻発している。

 3年前、広州市でニセ酒を飲んで14人が死亡した。昨年は広州市と安徽省でニセ薬投与で20人余が犠牲となった。

 中国政府は昨年、食の安全にかかわる事案6万8000件を摘発したとしているが、官民癒着の不正は広がる一方だ。医・食の安全を総合的に監督する中央機関のトップが、ニセ薬認可に関与し処刑される事件まで起きている。

 ニセ薬製造といった犯罪行為の蔓延(まんえん)だけではない。増える海外需要に応えるために、安全性を無視した原材料の使用やずさんな生産管理が拡大している。輸入国側の対応も追いつかない。

 倫理欠如のまま、海外に垂れ流される中国産品の被害を食い止めるには、輸入国が「圧力」をかける必要がある。参考になるのが日本の対応である。

 5年前に日本では、中国産ホウレンソウの残留農薬が大きな問題となった。これを機に導入したのが、残留基準を超えた農薬や添加物を含む農産物などの販売を厳格に禁じる制度だ。

 世界一厳しいとされる制度導入を決めた際、中国は強く反発した。だが、実施後は、危険食品の流入防止というだけでなく、中国の日本向け農産物の産地では、安全、安心への配慮が格段に高まる副次的効果を生んだ。

 今回も中国政府は当初「マスコミは騒ぎすぎ」と反発したが、国際批判が高まるにつれ、生産から流通の各段階で安全管理を強化する、との姿勢に転じた。

 中国政府は事態を深刻に受け止め、改革に着手すべきだ。そうでないと、中国産品は世界中で排除されかねない。

http://www.yomiuri.co.jp/editorial/news/20070714ig90.htm