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2007年07月13日(金) 03時02分

<陸自汚職>贈賄側業者に天下りあっせん 癒着の温床か毎日新聞

 陸上自衛隊の装備品発注を巡る汚職事件で、陸自が贈賄側の「伸誠商事」(東京都千代田区)に対し、退職自衛官(OB)の天下りをあっせんしていたことが分かった。現在も装備品運用業務にかかわっていたOB(64)が常勤顧問を務めている。同社は自衛隊への納入が売り上げの9割以上を占めており、「天下りを通じた癒着体質が汚職事件の温床になったのではないか」と指摘する声が出ている。
 事件では収賄側の1等陸佐、西真悟(44)と贈賄側の同社役員、松井智則(44)両容疑者が警視庁に逮捕された。東京地検は拘置期限の13日に2人を起訴するとみられる。
 現在常勤顧問をしているOBは60年代に防衛大学を卒業後、装備品を研究する陸自の「需品学校」で教育部長を務めるなど一貫して装備品の研究や運用にかかわった。9年前に退職、同社に常勤顧問として再就職した。
 OBは毎日新聞の取材に対し「陸自の幕僚本部が決めて『伸誠商事に行ってくれ』と言われた。私の前には5人の退職者が非常勤で働いていた」と認めた。
 入社後は陸自の駐屯地を訪ね現役幹部と懇親を深めたり、同社が納入した装備品の不具合などの情報を集めて改良につなげているという。西容疑者については「一緒に仕事をしたことはなく、わいろの授受も知らなかった」と説明、事件とは無関係だと強調した。
 元防衛省幹部によると、陸自で装備品の業務にかかわっていた防衛大出身の幹部二十数人が現在も同社以外の納入業者に天下っているという。
 かつて陸自と取引のあった業者は「『契約が多いからOBを引き取ってくれ』と言われたことがある」と明かし、「自衛官は60歳前に定年を迎えるため、再就職先を確保する必要があるのではないか」と証言した。
 陸自が業者に天下りをあっせんしているとの指摘に、陸自幕僚監部広報室は「人材を求める業者から退職自衛官についての問い合わせがあれば、本人の了承を得て情報提供をしている」と説明している。【石丸整、鳴海崇】
 ▽東京・市民オンブズマン事務局長の谷合周三弁護士の話 業務受注と陸自からの天下りの関係が、今回の汚職の温床になっているのではないか。売り上げの9割を陸自向けが占めるような会社への天下りあっせんはやめるべきだ。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20070713-00000010-mai-soci