記事登録
2007年07月11日(水) 16時28分

奈良朝鮮会館 「なぜ未登記」疑念拭えず 違法状態 問われる市の姿勢産経新聞

 登記上は存在しない“幽霊ビル”−。在日本朝鮮人総連合会(朝鮮総連)の関連施設「奈良朝鮮会館」(奈良市大森町)をめぐって、そんな実態が浮かび上がった。地元では、建物はすでに50年前にはあったとの証言もあり、長年にわたって違法な状態が継続していた形。市は固定資産税を全額免除しており、朝鮮総連の施設に対する課税の動きが全国的に広がるなかで新たな問題を投げかけるとともに、事実上放置されてきたことで、今後の市の姿勢も問われそうだ。

 JR奈良駅から徒歩で数分の距離。県道と主要地方道の交差点の脇に3階建てのビルが建つ。

 白色の外壁は全体的に黒ずみ、年月の経過を感じさせる。外見からは鉄筋コンクリート造りに見えるものの、登記がないので正確には分からない。ただ立地的には、周囲に奈良県の総合庁舎や関西電力奈良支店、奈良県農協会館などの主要施設が立ち並ぶ、市内の一等地だ。

 「建物はだいぶ前からある」。近くに住む70歳代の自営業男性は「はっきりとは覚えていないが、私が商売を始めた昭和32年ごろには、すでにあったと思う」と振り返った。

 「一体なぜ、長年登記すらされなかったのか」。市内の土地家屋調査士は首をかしげる。「一般的にいえば、固定資産税逃れということが考えられ、その場合には市の調査漏れということにもなるが…」。

 しかし、同会館については、少なくとも平成17、18両年度は、市の調査漏れではなく、同税が全額免除されていたことが総務省の調査で分かっている。調査士は「結局、登記されなかった理由は推測がつかない」と話す。

 朝鮮総連の関連施設をめぐっては、近年は同税を課税する動きが、全国の自治体で広がっている。

 同省が、関連施設が所在するとみられる全国140自治体を対象に行った調査によると、公共的な施設であることなどを理由に同税を全額免除していたのは、17年度の65自治体(46・4%)に対し、18年度は45自治体(32・1%)に減少。逆に、減免措置をまったく行っていないのは、31自治体(22%)から45自治体(32・1%)に増えていた。

 一方で、16年12月の旭川地裁判決や今年5月の新潟地裁判決など、最近では、関連施設について「減免しない」とする自治体の判断を妥当とする判決が相次いでいる。登記すらなされていないずさんな実態が明らかになった今回のケースは、関連施設への課税のあり方を改めて問いかけるものにもなりそうだ。

【関連記事】
【記者ブログ】幻に終わった金正日のカジノ大構想
【記者ブログ】特捜部の狙いは…
総連問題で北朝鮮が声明「必要な措置」「主権侵害」
総連売買詐欺 河江容疑者、弁護士にアリバイ工作?
総連本部虚偽登記 取り巻く“やり手”“風雲児”
【主張】総連差し押さえ 強制執行を突破口にせよ
【記者ブログ】金正男と会った日のこと…マカオ記(1)
【記者ブログ】朝鮮日報さん、なんでも記事にすればいいってもんじゃ…

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20070711-00000032-san-soci