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2007年07月11日(水) 20時17分

<ブルドック>買収防衛策発動、米欧では批判的な見方強く毎日新聞

 米投資ファンド、スティール・パートナーズから買収を仕掛けられているブルドックソースが11日、新株予約権発行による買収防衛策を国内で初めて発動した。株主の3分の2以上の支持を取り付け、地裁、高裁のゴーサインを得ての発動ではあるが、買収防衛策がめったに発動されることのない米欧では、ブルドックの発動に対し批判的な評価が支配的で、「対日投資の意欲をそぎかねない」などと悪影響を指摘する声が少なくない。【ワシントン木村旬、ロンドン藤好陽太郎】
 日本では「三角合併」が5月に解禁され、外資が日本企業を買収しやすくなったことから、日本政府に資本市場の開放を求めてきた米政府内では「10年までに対日投資倍増という日本政府の目標を後押しする」(キミット財務副長官)との期待が高まっていた。
 それだけにブルドックの防衛策発動に対しては、「日本では株主の権利を主張する動きが拡大してきたのに、その動きを後退させかねない。海外投資家が日本以外の市場に視線を向け出すだろう」(米ウォールストリート・ジャーナル紙)との指摘が出ている。
 企業のM&A(買収・合併)が活発な米国でも、「ライツ・プラン」と呼ばれる買収防衛策を導入している企業が全体の6割を占める。買収者が一定割合の株式を買い占めた場合、買収者以外の株主に自動的に新株を発行するというものだ。企業価値を損なうような敵対的買収に対抗する手段として、米裁判所も認めている。
 だが、経営者の保身につながる過剰防衛策には、司法判断や機関投資家のチェックによって歯止めがかけられている。「ライツ・プラン」も3年ごとに株主総会の承認を受けるなどハードルを高くしている企業が多い。
 防衛策が実際に発動されるのは極めてまれで、これまで「ライツ・プラン」が発動されたのは1件のみとされる。
 英国でも、「発動が相次げば、日本市場の閉鎖性が際立ち、海外勢は、日本への投資を回避せざるを得なくなる」(英マンチェスタービジネススクールのガウリ教授)との警戒感が強まっている。
 英国では「株主の圧力があってこそ、経営が効率化し、企業統治も向上する」という考え方が根強く、敵対的買収でも米国以上に容認する空気がある。政府の独立機関が「買収に関する行動規範」を設けており、株主総会の承認なしに企業は買収防衛策を発動できない。
 現在も、欧州最大のドラッグストアチェーンである英アライアンス・ブーツが米大手投資ファンドから2兆7000億円規模の買収を仕掛けられているところだが、「経営陣にできることは、株主との連携を密にし、企業価値の向上をアピールすることだけ」(金融革新研究センターのラッセル理事)と冷静な見方が一般的だ。
 敵対的買収であっても容認する背景には、1980年代以降、英政府が外資による英企業の買収を容認し、結果的に現在の繁栄につながったとの自負があるようだ。。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20070711-00000090-mai-bus_all