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2007年07月11日(水) 23時05分

イラク米軍、部分撤退論強まる 与党内も反旗の動き朝日新聞

 イラク駐留米軍を増派したブッシュ米政権に対し、部分撤退を求める声が勢いを増している。野党民主党が、議会で撤退義務化の立法措置を再び目指して攻勢をかけるだけでなく、共和党からも政権に反旗を翻す動きが相次ぐ。政権側は依然強気だが、水面下で代替の出口戦略を模索し始めたとの報道も出始めた。

 「イラクでこの戦いに勝つことは可能だ」。ブッシュ大統領は10日、オハイオ州クリーブランドで演説した。

 今年1月から段階的に進んできた増派の部隊配備は6月になって完了したばかり。大統領らは、戦略が功を奏しているかどうか判断を下すのは時期尚早だ、と主張。評価は、イラク駐留米軍のペトレイアス司令官の情勢判断に基づく議会あて報告書が出る9月まで待つべきだとしてきた。

 だが、足元は揺らいでいる。ニューヨーク・タイムズ紙は9日付1面で、ホワイトハウス内部でも部分撤退論を早く検討すべきとの意見が力を増しつつあると報じた。

 その最大の要因は、相次ぐ共和党議員の「脱走」だ。外交安保畑の重鎮、ルーガー上院議員が6月25日に増派策の批判に転じた。08年に改選を迎えるボイノビッチ、ドメニチ両上院議員も部分撤退を唱え始めた。

 同紙によると、こうした情勢を受け、現実派のゲーツ国防長官、ライス国務長官らは、判断を9月まで延ばせば与党内の支持は修復不可能な水準まで落ちかねない、と判断。議会側に先んじ「ポスト増派」戦略の方向性を早く示すべきだ、と主張しているという。

 最初のヤマ場になりそうなのが今週末だ。増派と関連して議会が政権に義務づけていたイラク情勢の報告書のうち、国民和解などに関する18項目の「努力目標」をめぐるイラク政府の達成度を評価する最初の中間報告の提出期限が15日に迫る。

 ゲーツ長官は8日、今週の中南米歴訪を突然取りやめた。中間報告に合わせた政策協議のためとみられる。

 議会でもイラク戦略の転換を迫る立法措置の模索が始まった。具体的には(1)イラク戦争開戦への02年の権限付与決議が効力を失っているとして、イラク駐留の継続に新たな権限付与決議の義務づけ(2)部分撤退を提唱した昨年末の超党派有識者集団「イラク研究グループ」提言の立法化、などが検討されている。

 民主党はこの春も撤退を義務づける立法措置を目指したが、大統領の拒否権の前に敗れ去った。上院民主党のトップ、リード院内総務は9日、「性急な撤退はだれも求めていない」と述べ、段階的な部分撤退など現実的な措置の要求で、共和党穏健派と妥協を目指す可能性を示唆した。

http://www.asahi.com/international/update/0711/TKY200707110523.html