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2007年07月04日(水) 14時32分

「なぜ自殺」遺族から聞き取りへ…予防センター、今秋から読売新聞

 政府の自殺対策を支援するため、昨年新設された「自殺予防総合対策センター」(東京・小平市、竹島正センター長)が、今秋から全国の自殺者、数百人の遺族を対象に聞き取り調査を行う。

 遺族に精神的なケアをしながら、死に至るまでの経緯を語ってもらい、内容を分析することで具体的対策に結びつけるのが目的。

 日本では自殺者が9年連続で年間3万人を超える異常事態となっているが、自殺の原因については、警察庁などの統計で大まかな傾向が把握されているだけだった。全国レベルの実態調査は初の試みとなる。

 竹島センター長らは昨年度、試行的な調査として、自殺者25人の遺族を対象に聞き取りを行い、同じ地域、年代で家族が自殺していない対照群・25世帯と比較した。その結果、自殺者には〈1〉自殺前の1か月間に、服用していた薬の中断や、交通事故・違反など不注意な行動が目立つ〈2〉自殺未遂の経験者が多い(7人)〈3〉自殺直前は7割の人が精神障害の状態だった〈4〉自殺直前の1か月は、家族以外の交友関係が減り、行動範囲が狭くなっていた——といった傾向がみられた。

 今秋から始める聞き取り調査は、都道府県と政令市に協力を求めた上で、今年になってから自殺した人の家族を対象にする。対照群への聞き取りについても検討している。

 精神科医と保健師が2人1組になり、自殺した人の生活歴、精神障害や身体的疾患の有無、収入や借金、労働時間、交友関係などを聞く。さらに、借金、過労、いじめなど、死の原因と思われる出来事の前後から死に至るまでの経緯を詳細に聞き取ることで、どんなことが悩む人を自殺へと傾かせ、何が自殺を引き留めるかを把握したいという。

 例えば、医療機関にかかりながら自殺を防げなかったケースについては、医療の効果がどの程度あったのか、どんなケアが足りなかったのかを突き止める。

 聞き取りによる遺族の精神的負担を少なくするため、遺族の気持ちをじっくり聞いてから質問するなど、調査員に対する事前研修を徹底する。来春に一次報告書をまとめ、当面の対策に結びつける方針で、その後も調査を続け、自殺の特徴を継続的に把握する。

http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20070704it05.htm?from=top