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2007年07月04日(水) 15時02分

<朝鮮総連詐欺>元長官前面に資料作成 安心偽装で出資募る毎日新聞

 在日本朝鮮人総連合会(朝鮮総連)中央本部を舞台にした詐欺事件で、元公安調査庁長官の緒方重威(しげたけ)(73)容疑者ら3容疑者が、本部売却に関する出資を募るため、緒方元長官の肩書を前面に押し出した不動産物件資料を作っていたことが分かった。1ページ目を元長官の名前と略歴で埋めた特異な体裁で「安心できる」と強調していた。一方で、総連側が訴訟を抱えていることなど悪条件の記載はなく、東京地検特捜部は詐欺性を裏付ける重要な物証とみている模様だ。
 関係者によると、物件資料は青いビニール製のA4サイズのファイルで厚さが約5センチ。中央本部の土地・建物に関する説明資料で、登記簿謄本や公図などが挟まれていたが、最初のページは緒方元長官の名前や経歴だけが記載されていた。
 中央本部の購入代金35億円の調達役だった元銀行員、河江浩司容疑者(42)は4月中旬ごろ、この資料を持参して不動産関係者に出資を呼び掛けた。資料を見せられた不動産仲介業者は「当事者の経歴がいきなり登場する資料は見たことがない」と驚いたという。河江容疑者は総連側代理人の土屋公献(こうけん)・元日本弁護士連合会会長(84)の名前も挙げて「この人たちが取りまとめる」と説明した。
 一方で、総連が整理回収機構から約627億円の返還訴訟を起こされ、敗訴すれば強制執行を受ける可能性があるという重要な事実の記載はなかった。仲介業者は翌5月15日、緒方元長官の法律事務所(東京都港区)で元長官らと面会。取引の信用度を確認するために1ページ目の記載に触れ「あなたが印籠(いんろう)ということか」と尋ねると、緒方元長官は「投資する人が安心するでしょう」と答えた。
 緒方元長官側はこの場で初めて訴訟に言及し「総連と回収機構は和解できる」と説明し、安全な取引と強調した。しかし、仲介業者が土屋元会長や総連幹部との面会を求めると「時間がなく会わせられない」と答えたという。
 仲介業者はその後、複数の知人から「あの物件はやめた方がいい」と忠告され、5月24日に正式に断った。2日後、緒方元長官らは最後に打診していた航空ベンチャー会社社長(41)にも出資を拒否されたのに「出資の見通しが立った」として同31日、総連側と売買契約を交わしたことが既に判明している。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20070704-00000053-mai-soci