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2007年07月03日(火) 15時05分

<振り込め詐欺>バイク便悪用が急増 被害夫婦が手口証言毎日新聞

 バイク便を悪用した振り込め詐欺が今年に入って急増している。東京都内では1〜5月で30件、被害総額約7500万円と昨年1年間の被害(20件、4685万円)を既に大きく上回った。バイク便詐欺とはどのような犯罪なのか。4月に360万円の被害にあった夫婦を取材すると、巧妙な手口が浮かび上がった。【神澤龍二】
 「バイク便を向かわせるのでお金を渡して」。東京都八王子市の70代の夫婦宅に電話がかかってきたのは4月24日午前10時半ごろ。電話に出た妻(72)に男が「オレだよオレ。会社の金を使い込んだ」と早口でまくし立てた。妻がとっさに会社勤めの次男だと思い「いつもと声が違うね」と聞くと、「風邪をひいた」と説明。「突然監査が入る。今日中に補てんしないと会社を辞めさせられる」と疲れ切った声でお金を求めた。
 男はさらに、「会社にいないと怪しまれる。午後2時前にバイク便を向かわせる」と時間を指定。(1)電話帳ぐらい大きさの紙箱に現金を入れ粘着テープで何重にも巻く(2)あて先と送り主は書かない(3)中身を聞かれたら「書類」と答える(4)余計な会話は一切しない——と詳細に指示した。
 夫(78)は貯金360万円を下ろし、時間通り到着したバイク便に渡した。領収書の届け先には次男の勤務地と異なる地名が書かれていたが、夫妻は「時間を指定されて慌ててしまった」と悔しそうに振り返った。自宅住所を事前に調べるなど用意周到な手口だった。
 バイク便は電話1本で荷物を運ぶ。荷物の受け渡しの際に現金で料金を受け取り、一般的に客の身元を確認することはないという。都内で約100業者が営業している。
 警視庁よると、都内でバイク便を使った詐欺被害が初めて確認されたのは06年2月。翌3月には7件で計1840万円の被害があった。その後は月4件以下で推移したが今年は被害が急増。3月は11件2187万円▽4月には13件、3836万円と過去最悪となった。
 警視庁は、金融機関がATM(現金自動受払機)による現金振り込みを1回10万円までに制限するなど対策を取ったことから、詐欺グループがバイク便へ手口を切り替えていると分析。業者に荷物の中身や配送目的の確認を呼び掛けている。だが、悪用された経験があるバイク便業者は「客に荷物の中身を聞くことは信頼関係上できない」と話し、被害防止の困難さをうかがわせた。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20070703-00000057-mai-soci