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2007年07月02日(月) 03時04分

<社保庁詐欺>全国で横行 職員装い「手数料」振り込ませる毎日新聞

 社会保険庁の職員を装って「年金の払戻金がある」などと誘う振り込め詐欺事件が今年に入って全国で70件発生し、被害総額は約5900万円に上っていることが、毎日新聞の調査で分かった。社会保険事務局が把握する不審電話も746件あった。警察当局は、年金記録漏れ問題で不安が高まる中、悪質な詐欺が横行しているとみて警戒を強めている。
 調査は、全国警察本部が6月22日現在で把握している被害件数と被害額をまとめた。また、不審電話について、全国の社会保険事務局が把握する数を集計した。
 不審電話は北海道から九州まで全国に広がっており、今年4月以降急増していた。事件被害は関東以南で発生。最も多かったのは、東京の11件で被害は計1313万円。さらに、広島9件800万円、長崎9件750万円、岡山4件700万円など10府県で200万円以上の被害が出ていた。
 被害者は、年金に関心が高く、ATM(現金自動受払機)の操作に不慣れな高齢者が目立っている。「年金還付に手数料がかかる」など言葉巧みに指定口座に現金を振り込ませるケースもあるが、指示通りに画面のボタンを操作し、現金を振り込んだことに気づかない場合も多い。
 さらに「社会保険庁公共課」(長野)、「社保庁の東京の年金課」(長崎)など実在しない部署名を名乗る手口もある。一方で、年金問題を心配する被害者に、「お金が戻らないと困りますね」(京都)▽「言うことを聞かないと年金が無効になる」(大分)と不安をあおることもあった。【まとめ・遠山和彦】
 ◆手口は多様で巧妙
 社会保険庁職員を装う振り込め詐欺の手口は多様で巧妙だ。電話先には社会保険事務局職員役がいたり、うその還付金用フリーダイヤルも用意。高齢者宅を直接訪問する詐欺事件まで起きていた。交通事故、痴漢、国税還付金など手口を替えてきた詐欺グループが、社会保険庁の年金記録漏れに伴う高齢者の不安に目を付けている。
 6月7日に約100万円を振り込んでしまった埼玉県坂戸市の無職男性(71)は、社会保険事務局職員を名乗る男から「7万2000円の厚生年金の還付金がある」と言われ、指示通りにATMの画面を操作して帰宅。再び男から、ATMに行くように指示され、不審に思って口座を確認して、やっとだまされたことに気付いたという。
 複数の男が登場するケースもある。
 埼玉県朝霞市で同1日に起きた事件。無職の男性(73)方に、同市職員を名乗る男から電話があった。「高額医療還付金があります。新宿社会保険事務局に連絡して下さい」。男性が指示された連絡先に電話をすると、事務局職員を名乗る別の男が出て、金融機関のATM(現金自動受払機)に行くように指示した。携帯電話で指定された通りに画面を操作するうちに現金約100万円を振り込んでしまった。
 5月24日に前橋市で起きた事件では無職女性(76)宅に社会保険庁職員を名乗る男から電話があり「還付金が戻るから」とATMに行くように指示された。連絡先のフリーダイヤルに電話をすると、担当者を名乗る別の男が登場。男の指示に従ってATMを操作するうち、女性は現金約30万円をだまし取られた。
 名古屋市など愛知県内では電話での被害でなく、社会保険庁職員を名乗る男が市内の高齢者宅を直接訪問し、年金還付の手数料名目で約2万円前後の現金をだまし取る詐欺事件が今年になって7件発生した。被害は計15万円。
 ATMを利用した税務署職員を装った税金還付名目の振り込め詐欺が昨年6月から今年5月末までに約1000件、約11億3000万円の被害に上っており、警察庁は「同じ詐欺グループが社会情勢に応じて手口を替えている可能性がある」とみている。【遠山和彦】

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20070702-00000006-mai-soci