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2007年05月27日(日) 03時04分

タクシー参入、一部制限 秋にも過当競争の地方で朝日新聞

 国土交通省は、タクシー業界への新規参入や台数の増加を制限する方針を固めた。とくに競争が激しい地方の中核都市などで、今秋にも規制に踏み切る。02年の参入自由化をきっかけにタクシー台数が急増し、全国で競争が過熱して、運転手の労働条件が悪化。交通事故も増加するなど規制緩和の悪影響が目立ってきたことが背景にある。

 タクシー業界への新たな参入や自動車の台数を増やすことは、02年に国による免許制から許可制に変わった。自由化に際し国交省は、タクシーの台数が増えすぎて安全が損なわれるおそれがあると判断した地区に「緊急調整措置」を発動し、台数を増やすことを認めない仕組みも導入した。

 ただ、規制が安易に発動されるようでは、タクシー利用者に負担のしわ寄せがいくため、対象となる地区で(1)客を乗せた走行距離(実車キロ)の5年間の減少率が全国平均を15%超上回る(2)法令違反や苦情が相当数寄せられるなど、厳しい条件を課した。このため、参入規制が実施されたのは、02〜06年の沖縄本島だけだ。

 「抜かずの宝刀」状態を解消するため、国交省は、実車キロに関する発動要件を緩和する方針。過当競争の状態が改善されるまで、期間限定で新規参入や台数の増加を制限する。

 タクシー業界は不況による失業者の雇用の受け皿となり、業者と車両数が急増。運転手の05年の平均年収が5年前より10%以上少ない302万円に減る一方、タクシーの事故は最近の10年で65%も増えた。

 とくに札幌や仙台、広島、福岡といった地方の大都市で競争が激しさを増しており、実車キロの減少率は全国平均より10%以上悪化している。しかし、「15%超」という現行の条件には届かないため、緊急調整措置の対象となっていない。

 国交省がルールを見直した場合、タクシーの参入規制は、こうした地方の都市でまず実施される公算が大きい。東京や大阪、名古屋ではタクシーの利用者も多いため、規制の対象にはならないとみられている。

http://www.asahi.com/national/update/0526/TKY200705260213.html