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2007年05月23日(水) 11時12分

<もんじゅ>冷却材ナトリウムを再充てん 95年の事故以来毎日新聞

 日本原子力研究開発機構(原子力機構)は23日午前、95年12月のナトリウム漏れ事故から運転を停止している高速増殖炉「もんじゅ」(福井県敦賀市)で、2次系配管に冷却材のナトリウムを再び充てんする作業を始めた。今月まで1年8カ月にわたる改造工事で交換した機器などの試験が目的。今後、国の安全審査や福井県、敦賀市の同意などを経て、原子力機構は早ければ来年5月の運転再開を目指す。
 この日午前10時20分、A〜Cの3系統ある配管のうち、B系統で充てん作業を開始。予定では約200度に保たれた液体ナトリウム約200トンが、ポンプで2日間かけてタンクから配管に移される。その後、他系統でも作業を行い、6月上旬には事故が起きたC系統にも11年半ぶりに約230トンが注入される。
 95年の事故では、出力40%で試運転中、設計ミスがあった温度計が振動で折損。配管内を流れる高温の液体ナトリウム約640キロが漏れて火災が起き、原子炉が停止した。旧動燃が現場のビデオ映像を隠したこともあり、社会的に強い批判を浴びた。
 再発防止のための改造工事は05年2月に福井県知事が了解を表明。同9月に始まり、179億円を投じて、折れにくい温度計に交換したり、事故時にナトリウムを素早く抜き取ることができるよう配管を太くするなどした。
 もんじゅを巡っては、反対派住民が国に対し原子炉設置許可の無効確認を求めて85年に提訴。05年5月、最高裁で「安全審査に看過し難い過誤はない」との判決が出され、住民側の逆転敗訴が確定した。【平野光芳】
 【高速増殖炉】 燃えないウラン238を燃えるプルトニウム239に効率よく変換し、消費した以上のプルトニウムを生み出すことを目指す原子炉。実用化までに実験炉、原型炉、実証炉、実用炉の4段階の炉が建設される。「もんじゅ」は研究段階の原型炉で、85年に着工、94年に初臨界。原子炉を循環し、発生した熱を取り出す冷却材には液体ナトリウムを使う。しかし、空気や水と反応すると激しく燃焼するなど取り扱いが難しく、コスト高などから、欧米では建設中止や廃炉が相次いだ。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20070523-00000034-mai-soci