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2007年05月22日(火) 15時44分

<山谷>若い労働者増える ネットで安宿探し毎日新聞

 簡易宿泊所が建ち並ぶ山谷(東京都荒川区)。大阪・釜ケ崎と並び日雇い労働者の街として知られる。だが、時代の流れの中で労働者は高齢化し、生活保護受給者が半数以上を占め、ここ数年街は活気を失っている。ネットカフェなどで夜を明かす若者が話題になる中、山谷にも若い労働者が集まりつつある。“元祖労働者の街”に集まる若者の背景を追った。【市川明代、東海林智】
 夕刻、JR南千住駅から山谷へ向かう人波の中に、2人組の若い男性がいた。茨城県出身の男性(24)は、3月下旬に職を求めて上京した。派遣先の食品工場で、アパートの更新料を払えず途方に暮れる群馬県出身の男性(26)と出会い、インターネットで安宿を探して山谷へたどりついた。日給は7000円で宿代は1人1泊2200円。金をため、共同生活を目指しているという。
 地域間の格差が広がる中、求人の少ない地域から職を求めて来る若者もいる。東北出身の男性(25)は、持ち帰りの豚肉いためライスと缶ビール片手に簡宿へ向かった。高卒時に就職先が見つからず、バイトばかりの生活に見切りをつけ上京した。工事現場で知り合った高齢の労働者から山谷の方が仕事が見つかると聞き3カ月を過ごしている。派遣会社に登録し、携帯電話に連絡をもらう携帯派遣の日給は6000円。男性は「ここだと1万円以上もある。田舎は本当に安い仕事しかなかった。宿代も安いししばらく稼ぎたい」と疲れた顔に笑顔を見せた。
 水色のタオルを頭に巻いた男性(34)は北海道出身。数年前から、住み込みの仕事が途切れると山谷へ来ている。子供のころ両親が離婚。養護施設で育ち、中学を出ると自衛隊へ。22歳で上京し、風俗店や建設土木など住み込みの仕事を転々とした。その間、親類に引き取られていた2人の妹は結婚した。高齢の労働者が野宿をする道すがら語った身の上。「夏までには金をためて、この生活から抜け出したい」。自分を鼓舞するように語った。
 ◇簡易宿泊所の稼働率、「全盛期」と変わらず
 山谷はバブル崩壊後、日雇い仕事が減り、野宿者が急増した。高齢化した労働者や野宿者が簡宿で生活保護を受けるケースが増えた。03年の都の調査では、簡宿のベッド数約6800の6割以上が受給者だという。
 一方で、サッカー・ワールドカップ開催以来、外国人バックパッカーが増えた。パソコン設備などを完備した1泊3000円程度の簡宿の新規建設も相次ぎ、ビジネスマンも増えた。同地域の「城北旅館組合」の田村康博理事長は「比較的安い宿で、若いフリーターが増えている」と話す。同理事長が経営する1泊2200円の「七福」では数年前から、若い労働者が泊まり始め、滞在は1週間から数カ月までさまざま。組合加盟店の稼働率は87%で、労働者でにぎわっていたころと変わらないという。田村理事長は「生活保護の受給者も、今後は減る。外国人旅行客やビジネスマンとともに、フリーター層が、新たな市場になる」と予測する。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20070522-00000058-mai-soci