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2007年05月21日(月) 03時04分

検視で殺人見逃し、10年で13件…体制の不備判明読売新聞

 変死体が見つかり、警察が検視でいったん病死などと判断したものの、遺体の火葬後に他殺と判明したケースが、過去10年間に全国で少なくとも13件あったことが読売新聞の調査で分かった。

 一方、検視で事件性なしと判断された変死体についても、行政解剖で死因を調べる監察医制度の充実した東京、大阪、神戸では、検視ミスによる殺人の見過ごしが、この10年で計19件あったことも判明。体の表面を主に調べる検視の限界が裏付けられるとともに、監察医制度のない全国の大半の地域では、検視の誤りに気付かないまま数多くの殺人事件が埋もれている可能性が浮かび上がった。

 検視は、変死体が見つかった際、事件性の有無を判断するために警察官が行う手続き。外傷や死斑などを調べ、事件性が疑われる場合は司法解剖でさらに詳しく死因を調べる。しかし、事件性なしと判断された場合、監察医制度のある都市部などを除けば、大半が数日で火葬される。

 大学の法医学教室などを対象に行った今回の調査によると、13件中6件は、〈1〉浴槽で水死させられた〈2〉強い酒を無理に飲まされた〈3〉血管に空気を注射された——など、遺体の表面を見るだけでは死因の特定が困難なケース。一方で、絞殺が3件、鈍器による撲殺と刺殺が各1件と、外傷などの痕跡が残っていたのに、事故や自殺などとしていたケースもあった。

 福岡の元スナック経営の女が元夫2人を殺害したとされる連続保険金殺人事件や、元暴力団幹部が上申書で3人の殺害などを告白した茨城の事件など、4件は最初の事件で検視ミスがあったため、結果的に第2の犯行を許すなどして被害拡大を招いたケースだった。

 遺体は、死因や凶器、死亡時刻の特定に役立つ。このため本来は重要な証拠の一つだが、火葬後に捜査を始めたこれらの事件では、写真など極めて限られた証拠から死因を特定するしかなく、警察は供述の裏付けなどに手間取った。

 一方、東京23区、大阪市、神戸市(西区と北区を除く)では、検視で事件性がないと判断された変死体でも、監察医の判断で行政解剖を行っており、検視ミスを直後にチェックできる機能が働いている。この行政解剖で殺人事件であることが判明したケースは、過去10年間に、東京で11件、大阪で4件、神戸で4件あった。

http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20070521it01.htm?from=top