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2007年05月18日(金) 09時45分

愛知立てこもり 妻を人質 粗暴な元組員 住民らも恐怖毎日新聞

 住宅街に響いた「パーン、パーン」という乾いた音とともに、男女が次々に倒れた。愛知県長久手町で17日起きた人質立てこもり発砲事件。妻とみられる女性を人質にとっている大林久人容疑者(50)は、以前から粗暴な言動などで近所の住民から恐れられていたという。何を目的に立てこもっているのか。なぜ家族を撃ち、警官を撃ったのか。現場の周囲を取り巻いた警官隊を、住民らは青ざめた顔で見守った。
 ◆「弾は100発以上ある」
 現場近くに住む住民らによると、発砲は少なくとも5発だった。最初に3回、数十秒後に1回、さらに約10秒後に1回聞こえた。
 現場向かいの愛知学院大寮に住む男子大学生(20)によると、室内にいたら「パーン、パーン、パーン」とはじけるような音がした。学生が民家を見ると、男が顔を出し、威嚇するように拳銃を構えていた。学生が近くまで行くと、救急車と警察官が来て、警察官が「来るな」と怒鳴った。さらに数発、発砲音がし、部屋に戻ってから外をのぞくと、担架に女性が乗せられ、「もう撃たないで」と叫んだという。
 しばらくして警官隊が周辺を取り囲み、男は興奮した様子で「お前ら後ろから入ったりするなよ。すぐ分かる。弾は100発以上ある」と怒鳴っていた。また男は捜査員の一人に「土下座しろ。地に頭をつけ」などと命令した。
 また、近くの建物の2階にある事務所で働く男性は外出先から帰った際、3、4人の男女が言い争う声や叫び声を聞いた。次に「パーン」という音が聞こえ、「車がパンクしたのか」と外をのぞくと、数人がもみあっている様子で、1人が倒れていた。続けざまに発砲音がして女性が倒れるのが見えたため、男性は「驚いて事務所の窓を閉めて電気を消した」。
 近くに住む50代の女性は、警察官から「外に出ないでください」と指示されたため、雨戸を閉めて屋内にこもった。女性は「びっくりしている。外にも出られず、会社員の息子は仕事を終えて帰宅しようとしていたが、規制があって帰れずにいるらしい。大学生の娘には『危ないから帰ってくるな』とメールした」と話した。
 現場の近くにあるエクステリア販売会社の男性社員(23)は社の外でたばこを吸っていた際、発砲音を聞いた。音のした方を見に行くと、警察官から戻るように言われた。社員8人は警察から外出を止められており、5人が帰社できない状態という。男性は「近くでこんなことが起こるなんて恐ろしい」と話した。
 県警愛知署によると、長久手交番の木本明史巡査部長は通報を受け、同僚2人とパトカーで現場に向かった。木本巡査部長は助手席に乗り、現場到着後、最初に駆け付けたところ、銃撃されたという。パトカーを運転していた警部補は「木本巡査部長に続いて現場に向かったら銃声が3発聞こえ、巡査部長が倒れていた」と証言。同署幹部は木本巡査部長について「交番勤務が長く、常に積極的、行動的に動くタイプの警察官だ」などと話している。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20070518-00000001-maip-soci