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2007年05月16日(水) 00時00分

根性で作り上げるモバイルパソコン読売新聞

ビジネスマン向けモバイルパソコンとしては、圧倒的な人気を誇る「Let’s note」。小さくて、頑丈なマシンを造り上げたのは開発者たちの根性だった。

開発の秘訣は決してあきらめないこと

麻野 倫裕  あさの・のりひろ
松下電器産業ITプロダクツ事業部テクノロジーセンター所長
 1982年大阪大大学院工学部卒業後、松下電器産業技術本部PC開発部入社。コンピュータ畑を歩き、2003年からITプロダクツ事業部・企画グループマネージャー。05年から現職。
—— 軽量、頑丈、電池長持ち。この3つを突き詰めていく中で、最も大切な要素は何ですか。

麻野 今年初めに発売された「R6」の重さは930グラム。前のモデルより69グラム軽くなりました。減量のかげには思い切った発想と地道な積み重ねがあります。ACアダプターの小型化や液晶の薄型化をして932グラムまで減ったのに、最後の2グラムがどうしても削れない。そんなときにどうするか?

 張ってあるシールを外します。その0・1グラムにどれだけこだわれるか。最後はそこです。決してあきらめないこと。不思議とできることは出てくるのですね。私たちの技術はデジタルではなく、アナログの積み重ねとよく言われます。

—— 新幹線を多用するビジネスマンや、世界の空を飛ぶ客室乗務員に人気が高いようですが、発売当初は苦労したのですよね。

麻野 2002年に発売した「CF-R1」は1キロを切るノートでした。当時は夢のような存在だったのですが、営業部隊からは「こんなもの、売れへん」とさんざんでした。軽さを追求する余り、厚くなったデザインに疑問を投げかけたのです。でも、ユーザーからの反応はよいものでした。

—— 「Let’s note」は、ユーザーの声を吸い上げて発展してきた歴史を持っていますね。

麻野 96年の初代モデルは、ニフティサーブの電子会議室で、ユーザーが不具合を書き込むと、マーケティング担当者が答えるようなこともしていました。我々のお客様は企業や法人が中心です。顔の見える相手なので、技術陣も開発しやすい。お客様の声を真剣に聴くということは、最初から続けています。開発のネタは、生の声にこそ隠れていますから。新製品を法人や一般消費者にさわってもらう「タッチ&トライ」のイベントもそうです。

—— ユーザーの声からアイデアをもらった具体例がありますか。

麻野 水をこぼしても内部を保護する防滴キーボードも、「タッチ&トライ」から生まれました。法人のお客様から、毎回のようにリクエストがありました。軽量化に成功したら、次はこれかと……。上司の命令より、お客様に直接言われた方が刺激されます。「やらなあかん」と思いました。手本はないから、実験装置を開発するところから始まる。その結果をどのように評価するかという問題もある。独創性プラス細かい改善が求められます。立ち止まったら終わり。どこまでがんばれるかですね。

http://www.yomiuri.co.jp/net/interview/20070516nt0d.htm