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2007年05月16日(水) 15時13分

診療科を半分近くに再編 医師不足解消の思惑も 厚労省朝日新聞

 厚生労働省は、医療機関が名乗ることができる診療科を、現在の38科から20科程度に再編する方針を固めた。細分化して患者にわかりにくくなっている診療科を廃止する一方で、幅広い病気を診断できる医師に公的資格を与え、その医師がいる医療機関には「総合科」(仮称)を名乗ることを認めることなどが柱だ。患者が医療機関を選びやすくするほか、医療機関ごとに初期診療と専門医療の役割分担を明確にし、医師不足の一因とされる大病院への患者集中を緩和する狙いもある。

 厚労省は今月21日、医道審議会に診療科名について検討する専門部会を立ち上げ、再編案を決めていく。08年度からの変更を目指す。診療科の見直しは96年以来。

 現在、医療機関が名乗れる診療科は医科33、歯科4のほか、一定の臨床経験を要件に国が許可する麻酔科がある。学会の要望などで細分化が進んだが、患者からは「花粉症だが耳鼻科とアレルギー科のどちらを受診するか迷う」「神経科と神経内科の違いが分かりにくい」などの声があった。

 見直しは、各学会による専門医の認定制度を調整している日本専門医認定制機構が定める18の基本診療科をもとにする。内科、外科、小児科など20科程度に絞る方針だ=表。アレルギー科、神経内科など19科の廃止や、「救急科」など4科の新設を検討する。「内科(呼吸器)」といった得意分野の併記は認める。

 現在は1人の医師がいくつでも診療科を名乗れるが、あまりに幅広すぎると批判があり、医師が1人の診療所では名乗れる診療科を2科までに制限する方向だ。

 見直しの目玉は「総合科」の新設。患者が最初にかかる初期診療で高い能力を持つ医師に、麻酔科のように国が公的資格を与え、その医師がいる医療機関に「総合科」を名乗ることを認める。体調の悪い人がどの診療科に行ったらいいか迷う場合、まず総合科にかかるようになれば軽症患者がいきなり大病院に行くことが減り、大病院の混雑解消や、多忙のあまり医師が大病院を辞める医師不足の改善につながると厚労省は期待する。

 総合科を名乗れる具体的な要件は専門部会で議論する。へき地での一定期間の診療経験などが要件の一つとなる可能性もありそうだ。

 一方で、専門志向が強い医師界で総合科をいかに浸透させるか、初期診察の能力の高さをどう判定するのか、など課題は多い。日本医師会は「厚労省の構想は初期診療を総合科医に限定するもので、患者が医療機関を選ぶ自由を阻害する可能性がある」と反対の姿勢。厚労省は、総合科を診療報酬で優遇することなども検討していくことになりそうだ。

http://www.asahi.com/life/update/0516/TKY200705160211.html