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2007年05月10日(木) 13時44分

5月10日付 よみうり寸評読売新聞

 ジェットコースターの起こりは帝政ロシアの昔という。サンクトペテルブルク郊外に木造山形の滑り台をつくり、そり遊びをした◆1873年のウィーン万国博には木製斜面のレールを車が下降する〈ロシアの山〉が登場した。日本では1952年の大阪・枚方と宝塚が初めてだが、ジェットコースターの名で登場したのは55年の東京・後楽園だった◆結構、歴史は古いが、売り物のスリルが過激になるのに安全の意識がついていけなかったのだろうか。商売にしている以上、安全装置は十二分、点検にも抜かりはないはずと思っていたのだが◆大阪・吹田市のエキスポランドの事故から5日、報じられたニュースは安全を信じる思いを裏切るようなものばかり。折れた車軸の検査項目や方法については日本工業規格(JIS)の基準がある◆超音波などによる「探傷試験」が年1回以上求められている。だが、このイロハさえ知らず、守らず「解体検査は義務ではない。法令違反はない」とも言う。こんなことでよくも危険を売ったものだ◆被害者の悲運にぞっとする。

http://www.yomiuri.co.jp/editorial/news/20070510ig05.htm