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2007年05月10日(木) 13時03分

<潜む銃>抗争減り値崩れ「1丁20万〜30万」毎日新聞

 長崎市の市長射殺、東京都町田市の発砲立てこもりと、銃器を使った事件が相次ぐ。平和なはずの日本でも銃器の危険は高まるばかりだ。警察庁によると、暴力団による抗争事件が減少した影響などで拳銃の押収量は年々減少傾向にあるが、密輸は依然続き、銃器は国内に潜在化している。どんな拳銃が使われ、どこに隠されているのか?【遠山和彦、鳴海崇】
 暴力団がかかわる闇市場で売買される拳銃の大半は密輸入された外国製だ。警察庁によると、昨年押収された真正拳銃407丁の製造国は▽米国107丁(スミス&ウェッソンなど)▽フィリピン41丁(密造銃パルティックなど)▽ベルギー32丁(ブローニングなど)▽ロシア(旧ソ連)21丁(マカロフなど)▽中国19丁(トカレフなど)——が上位。日本製は密造銃や旧日本軍使用の旧式銃などに限られている。
 暴力団関係者は「抗争が減った分、拳銃が闇市場でだぶつき、安く入手できるようになった。以前は1丁100万円単位だった銃が、今なら20万〜30万円で入手可能だ」と話す。価格の面からも暴力団の武装化に拍車がかかる状況にある。
 長崎市長射殺事件で使われた拳銃は米国の代表的な銃器メーカー、スミス&ウェッソン社製。同社の銃器は各国の軍隊・警察で採用され、信頼性は高い。同庁は▽渡米した日本人の持ち帰り▽国際郵便による郵送▽フィリピンなどを経由した密輸など、さまざまなルートで国内に大量に流入しているとみている。
 町田立てこもり事件で使われたのは旧ソ連軍がトカレフの後継として採用した軍用拳銃マカロフ。殺傷力が高く、中国や旧東側諸国で大量にライセンス生産されている。国内では00年ごろから押収が目立つようになった。同庁はロシア極東地域のロシア人犯罪組織が北海道や北陸地方の暴力団と結びつき、ロシアの闇市場で流通する拳銃を密輸しているとみている。
 ◇隠ぺい巧妙に
 全国の拳銃押収数は95年の1880丁をピークに減少傾向にある。昨年は458丁(モデルガンの改造銃などを含む)で、前年比で6.3%減、ピーク時の約24%にとどまった。一方で、銃器の密輸入事件では昨年6件14人を逮捕しており、05年の3件5人より増加している。同庁は「押収数は減ったが密輸は続いており、国内に潜在化する銃器量は増えている」とみている。
 銃器押収から免れようと暴力団側も必死だ。ある暴力団関係者は「武器庫は都市部に存在する」と話す。都心の中層マンションの一室では、ドアに小型カメラが仕込まれ、組員が玄関前の様子をうかがい、摘発に備えて拳銃は押し入れの壁の奥に十数丁単位で保管されているという。最近の摘発では、コイン駐車場に止めた車に隠したり、消火器の中やクーラーの吹き出し口の裏側に隠していたケースもあった。
 隠ぺいの巧妙化は警察官も実感している。同庁が03年3月に銃器捜査に携わる警察官182人に行ったアンケートでは、拳銃の隠匿について▽「(以前より)通常捜索を受ける場所に置かなくなった」92.4%▽「保管・取引場所が頻繁に変えられるようになった」52.4%▽「暴力団の組織内で隠匿・取引の情報に接する者が減らされた」49.7%——と答えた。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20070510-00000056-mai-soci