記事登録
2007年05月10日(木) 21時28分

<1億円裏献金>逆転有罪「これは裁判じゃない」村岡元長官毎日新聞

 「最初から有罪ありきだ。これは裁判じゃない」。日本歯科医師連盟(日歯連)から自民党旧橋本派への1億円裏献金事件の東京高裁判決で10日、「予想外」の逆転有罪を受けた元官房長官の村岡兼造被告(75)は怒りで体を震わせた。喜びの涙を浮かべた東京地裁の無罪判決から約1年2カ月。一変した司法判断に対し、改めて無実を訴え「泣き寝入りはしません」と上告を明言した。
 午後3時過ぎ、東京高裁102号法廷。紺のスーツ姿で入廷した村岡元官房長官は緊張の面持ちで判決を待った。「原判決を破棄する」。須田賢裁判長が告げる主文に耳を疑い、後ろの弁護団を振り返る。逆転有罪を確認すると、裁判所が用意した判決文の目次のみが印刷された1枚紙をじっと見つめた。
 判決朗読が進み、争点となった滝川俊行元被告(58)の証言を巡り「不自然ではなく信用できる」などと指摘する部分になると、思わず顔を上げ首を横に振る。しきりにメモを取りつつ、紅潮した顔で時折、検察官や裁判官をにらみつけた。
 政界引退で得た穏やかな暮らしが途絶えたのは04年9月。在宅起訴され新たな闘いが始まった。冠婚葬祭も「被告人だから」と固辞し、暗記するほど裁判資料を読み込んだ。昨年3月の1審無罪判決では裁判長から「今晩ぐらいは桜を楽しまれては」と告げられたが、検察側の控訴で「重い鉛が入ったような気持ち」は続いた。迎えた2審。「検察に不利な証言しか出て来なかった」と抱いた期待は裏切られた。
 判決後の会見で村岡元官房長官は「検察に迎合した不当極まる判決。上告します」と切り出した。「こんな判決では司法への信頼を失う。良心が痛まないのか」と須田裁判長を名指しして批判も。支援者へのメッセージを問われると、テレビカメラに向かって現役さながらの熱弁をふるった。「献金にははじめから関与しておりません。不当な判決や横暴な検察と闘います」。起訴から足かけ4年。まだ終わりは見えない。
 一方「祈るような気持ち」(検察幹部)で2審判決を迎えた検察側は、逆転有罪判決で威信を保ち、安堵(あんど)の空気が広がった。ある幹部は「ほっとした。1審は『えっ、なぜ?』って感じだったからね。こういう日ぐらい祝杯を上げたい」と笑顔を見せた。【高倉友彰、銭場裕司】

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20070510-00000134-mai-soci