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2007年05月02日(水) 00時54分

オーチス社、さび認識しながら2年近く放置 虚偽報告も朝日新聞

 東京都港区の六本木ヒルズ・森タワーで起きたエレベーター火災で、保守会社の日本オーチス・エレベータ(東京都)は1日、05年1月にワイヤロープのさび発生に気づいて清掃による除去を社内決定しながら、2年近く放置していたと発表した。同社はその後も十分な清掃と点検を怠り、都に対する定期検査報告でも「問題なし」との報告書を作成していた。

 この火災は、破断したワイヤの一部が他の金具と接触して飛んだ火花が原因とされる。都と国土交通省外郭団体の立ち入り調査では、事故機のワイヤの表面は赤さびと油汚れに覆われていた。国交省は建築基準法違反(虚偽報告)の可能性も視野に調査を進める。

 同社は05年1月、森タワーに11台ある同型機のワイヤにさびが発生しているのに気づき、当時の社長も出席した品質責任者会議で、対策として潤滑油の補給と清掃を決めた。だが、給油は数回したものの、清掃は昨年9月まで怠ったという。

 事故機については昨年11月から今年3月に計4回、ワイヤを清掃したが汚れは除去できず、ワイヤを構成する鉄線の一本一本の状態も目視で確かめられなかったという。

 同社は同型機11台について毎年3月、建築基準法に基づく定期検査の報告書を作成。国交省によると、今年と昨年の定期検査でも、ワイヤの状態を「A(=指摘なし)」として、都への報告書を作っていたという。

 日本工業規格(JIS)はワイヤについて、「汚れのないようにする」と定めており、同社は、規格違反と知りながら事実でない報告書を作成した疑いがある。

 さびの清掃を2年近く怠ったことについて、同社は「社内の連絡態勢に不備があった。ワイヤ管理のルールが現場で守られていなかった」と説明している。また、事実と異なる定期検査の報告書を作成した疑いには、「不適切だったと思う。事実関係を確認したい」と話した。同社が進めている緊急点検の対象は全国5万1500基で、23日に終えることを目標にしている。

 会見で江崎英二社長は「関係者や利用者の皆様にご迷惑をおかけし、おわび申し上げる。二度とないよう改善措置を講じたい」と陳謝した。

http://www.asahi.com/national/update/0501/TKY200705010419.html