企業に対し、慰謝料や賠償金名目で法外な金銭を要求するなどの不当要求に関する被害相談が、昨年1年間で1207件に上ったことが、警察庁の外郭団体「全国暴力追放運動推進センター」(東京)の緊急調査でわかった。
10年前の約4倍で過去最高。このうち、暴力団や暴力団系右翼団体を名乗ったケースも10年前の5倍以上で356件あった。
同センターは「企業が不当要求に毅然(きぜん)と対応するようになったことなどから、被害が表面化してきたとみられるが、それでも氷山の一角ではないか」と分析している。
調査はセンターが今年2〜3月、被害者から相談を受け付けている全国47都道府県の地方組織を対象にアンケートを実施し、過去10年分を集計した。
1997年の相談件数は310件だったが、年々増加傾向を示し、昨年は前年比65%増の1207件。要求の内容別では、「慰謝料・迷惑料」が34%で、「その他」の46%に続いて多かった。「代金以上の金額」は9%、「クレーム対象品の交換」が6%、「代金返金」は5%だった。
不当要求時の身分・肩書は、「暴力団系右翼団体」が17%、「暴力団員」が14%で、合わせて反社会的勢力を名乗ったケースは3割を占めた。「明示なし」「その他」もそれぞれ3割前後。組員が暴力的要求行為をすると暴力団対策法に基づき中止命令を受けるため、実際には暴力団関係者がもっと多いとみられる。
中には、指定暴力団組員が高級車を購入直後、「ブレーキが故障した」などと自動車販売会社に言いがかりをつけ、代金を全額返金させた上で、一時的に貸し出された代車も「損害を受けた」として、警察に逮捕されるまで返却しなかった悪質なケースもあった。
同センターは「各企業に法令順守の姿勢が根付き、従来は泣き寝入りしていたケースも相談するようになったのだろう」と分析。一方で、「景気が回復し、業績が上向く企業を狙って暴力団が不当要求をかける傾向はさらに強まるかもしれない」と警戒している。
同センターの中林喜代司・担当部長は「不当要求を受けた後、弁護士が介在したケースの約9割は、その後要求がなくなっているようだ。警察や弁護士と連携すれば、不当要求をはねつけることができる」と指摘する。