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2007年03月22日(木) 00時00分

鹿/角きり開催ピンチ朝日新聞

  ◆会場老朽化、改修費なし/募金開始

 江戸時代から続く奈良の伝統行事「鹿の角きり」の開催に黄信号がともった。会場の「角きり場」が老朽化し、観客が入るのは危険とされたためだ。主催する財団法人「奈良の鹿愛護会」は角きりが開かれる今年10月に間にあうよう改修工事をする予定だが、肝心の工事費約1800万円がない。愛護会は募金活動に奔走している。
 (棟形祐水)

 角きり場は1966年に完成。鉄筋コンクリート製のスタジアムで、500人を収容できる観覧席がある。近年はコンクリートがはがれるなど傷みが目立ってきた。

 愛護会は、設計事務所にコンクリートの強度など安全性検査を依頼。先月、人が集中する出入り口の階段と観覧席など計4カ所で鉄骨の老朽化が進み、危険と診断された。

 愛護会の収入は会費や「鹿せんべい」の売り上げ、県や奈良市の補助金など。年間約7500万円の予算はスタッフの人件費や鹿の保護活動費などに全額を充てており、かつかつの状態。改修費の捻出(ねんしゅつ)は不可能だという。金融機関からの借り入れも、返すめどが立たないためあきらめた。

 工事は3カ月かかるため、夏までに改修費が集まらなければ、今年の角きりは中止になる可能性が高い。

 市民や企業からの寄付が頼みの綱。愛護会は、県内外の企業を回って、「寄付してもらえれば、角きり場の壁に企業名を書いたり、会場内で看板を立てたりできるようにする」と呼び掛けている。

 鹿の角きりは戦後に復活してから毎年秋に途切れることなく開かれてきた。開催されれば、今年で55回目となる。

 寄付の問い合わせは、奈良の鹿愛護会(0742・22・2388)。

http://mytown.asahi.com/nara/news.php?k_id=30000000703220002