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2007年03月22日(木) 17時01分

気がゆるんだら指を切る…ひとりごと寺内タケシ夕刊フジ

 「寺内タケシとブルージーンズ」も結成から45周年を迎えました。ただし、たぶんそうじゃないかって話で、定かじゃない。昨日、今日の話だってまともに覚えていないのに、50年近くも昔のこととなるとね(笑)。ですから特別なことをやることもないでしょう。いつも通りじゃないですか。風の吹くまま、気の向くままですよ。

 毎年、コンサートを180回くらいやっています。そのうち40回は全国の学校で演奏するスクールコンサート。学校は全部ボランティアですから、1回やるとおおむね100万円の赤字になるんです。40回でざっと4000万円かかるわけですよ。その赤字を埋めるためには、キャバレーででも何でも稼がなくちゃいけない。それを140回やって、やっとプラスになるんです。

 スクールコンサートを始めたのは、1972年ですから、ずいぶん昔の話になります。当時はエレキは不良の温床になると、学校でも禁止され、マスコミも含め、日本中でバッシングされました。そのせいで、大人を信じられなくなった少年たちが何千万人といる。

 今では、僕たちが行った学校は全国1350校を数えます。僕たちが、一生懸命、学校を回っているのを見て、エレキで育った団塊の世代はもちろん、日本中のエレキファンが勇気を出すんですよ。「あの寺内が、まだがんばっているじゃないか、おれたちも…」と。

 日本中のいろんな世代の人が僕の演奏を聞いたって言ってくる。飛行機に乗るとパイロットに「その節は…」ってあいさつされたりする。話を聞いてみると、どこどこの航空学校で聞きましたって。新幹線に乗ると、ワゴンサービスをするお嬢ちゃんが「私、以前、寺内さんの…」と声をかけられて、「ぜひ、コーヒーをごちそうさせてください」というわけです。海外に行ったって同じで、大使館の職員から声をかけられたりする。

 みんな口々に「元気をもらいました」っていう。おかげで、こっちはどんどん元気を吸い取られちゃってね(笑)。

 僕も今年68歳ですよ。でも、意欲が衰えるってことはない。仮にね、一瞬でも気がゆるんだら、僕は指を切りますよ。家には、名刀村正と5寸のまな板が準備してある。ウチのおふくろは小唄の家元で、芸事にはものすごく厳しかった。そんなおふくろが亡くなる前に、一瞬でも気が抜けたら指を切ってしまえと、僕にくれたんです。

 だから、今日も指を切らないようにって、1回1回の演奏が命がけですよ。いい刀は研ぐと減るっていうんですけど、ピカピカに研いであります。その方が少しでも痛くないかと思って(笑)。


■てらうち・たけし 1939年、茨城県土浦市生まれ。68歳。62年「寺内タケシとブルージーンズ」結成、エレキブームを巻き起こす。以来、「エレキの神様」の異名をとり、精力的に演奏活動を続ける。4月15日、神奈川県民ホールでコンサートを開く。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20070322-00000005-ykf-ent