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2007年03月22日(木) 16時45分

解禁マニフェスト選挙、政策見極め重い責任朝日新聞

 この統一地方選から、首長選でマニフェストが配れるようになった。

 実際に出回るのは法定ビラだが、解禁の意義は大きい。地縁、血縁が幅をきかせてきた地方選を、政策で争う選挙に変えていく可能性を秘めているからだ。

 「宣言」という意味のマニフェストに、選挙用の明確な定義があるわけではない。数値目標、達成期限、財源などを書き込み、有権者と「契約」する形式のものを一般的にそう呼ぶ。「明るい社会にします」といった従来の公約との違いを強調する狙いがある。

 食堂のメニューのようだともいえる。これまでは店主が「おいしいよ」と叫んで客を集めた。それを品目と値段を示し、客に選ばせるようにしたというわけだ。

 今回の13知事選では、告示前に出した政策集の表紙に「マニフェスト」とうたう候補者が続出した。北海道、東京、神奈川、福岡、佐賀などほとんどの選挙区に広がっており、すでに選挙の標準装備といえる。

 4年前の統一地方選で、増田寛也岩手県知事らが掲げたのが最初だった。増田氏は「公共事業の投資規模を2年で3割削る」と公約し、地元の建設業者の反対をおさえて実現した。

 厳しい内容の政策でも選挙で支持されれば実行しやすくなる。訴えの内容が具体的になり、有権者が選びやすくなる。そんな利点が実証され、急速に広がった。国政ではすでに小冊子を配れる。

 市町村合併に伴う首長選で、小さな自治体出身の候補者が告示前のマニフェストで支持を拡大する例も相次いだ。統一選後半の市町村長選でも、各地で配られそうだ。

 なお課題も残る。数値目標の多さに比べて、財源があいまいなものが多い。有権者としては、必要な政策課題が欠けていないか、目標値が低すぎないかも見極める必要がある。検証可能かどうかも注目点だ。マニフェストは毎年、住民参加で達成度を測り、公表することで本物になる。

 マニフェスト選挙で変わるのは、公約や候補者だけではない。政策をこれまで以上に直接選べるようになる有権者の責任が、確実に重くなっていく。

http://www.asahi.com/politics/update/0322/007.html