浄瑠璃寺三重塔で見つかった落書き。刀の曲芸をする人物(右)や、体を大きく反らせた人物らが描かれている=朝日放送提供
落書きは、仏教美術の番組を取材していたスタッフが、三重塔内壁に描かれた「十六羅漢像」の見えにくい部分を確認しようと、赤外線撮影をして見つけた。羅漢の右上余白部分に、刀を頭上に放り投げている人物や、体を後ろに反らせた人物らが描かれている。「散楽(さんがく)」と呼ばれた大陸伝来の曲芸とみられる。空中の刀の周囲に弧線を描いて、回転する様子を表す手法は、現在のマンガにも似ている。
京都精華大マンガ学部のヨシトミヤスオ教授は、「刀の回転を表す効果線は、12世紀の鳥獣戯画でも見られるが、落書きにも広がっていたというのは面白い。イナバウアーのようなポーズにもデッサン力がうかがえ、落書きとしては一級品だろう」と話す。
刀の曲芸をする人物は片手に扇を持っている。現在も春日大社(奈良市)の若宮おん祭で奉納される「田楽(でんがく)」に、扇を前に置いた男性が小刀を空中に放る場面がある。この絵を見た春日大社の岡本彰夫・権宮司は「おん祭は平安後期の1136年に始まったと伝えられるが、田楽には当時の形が非常によく残されていることが確かめられた」と話している。
落書きがあった三重塔の内部は一般公開されていない。絵についての詳細は21日午前10時半から朝日放送テレビ「神と遊ぶ 春日大社若宮おん祭」で紹介される。
http://www.asahi.com/culture/news_culture/OSK200703200041.html