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2007年03月20日(火) 00時00分

門出の演奏会 和太鼓高らか朝日新聞

  和太鼓奏者になることを目指してきた横浜市鶴見区の友野龍士さん(18)が18日、コンサートを開いた。養護学校を卒業し、太鼓教室などを運営する会社への就職が決まった記念に、仲間たちが企画した。激しいバチさばきが奏でる響きに、聴衆は心を打たれた。

(斎藤健一郎)

  龍士さんは、1歳になっても座ることができなかった。検診で知的障害があることが分かり、母の真由美さん(44)は涙が止まらなかった。

  「なにをどうしていいか、分からない。時間がたてば治るのか。そう考えたときもありました」

  2歳になったある日、龍士さんは棒を持って床をたたいていた。真由美さんはやみくもにたたいているとばかり思っていたが、耳を傾けると、リズムを刻んでいた。地元のお祭りで演奏されるお囃子(はやし)のリズムだった。

  龍士さんは、真由美さんの背中におぶわれ、何度も祭りに出かけ、お囃子を聞いていたという。

  小学校の和太鼓クラブに入り、地元の複数の太鼓グループにも参加し、たくさんの仲間と知り合った。プロの指導も受けて次第に技量をあげ、今春、太鼓の販売や教室運営を手がける「太鼓センター」で、講師の補助などを始めるという。

  コンサート会場となった横浜市西区の市教育会館のホールは、500人の聴衆で埋まった。

  大太鼓やかつぎ桶(おけ)太鼓など、龍士さんは曲ごとに太鼓を替え、仲間と息を合わせながらお囃子や創作曲を演奏した。真由美さんとの共演もあり、客席から、大きな歓声と拍手がわいた。

  実行委員長を務めた太鼓グループの代表、玉田菅雄さん(57)は「龍ちゃんが天真らんまんに、太鼓を心から楽しむ姿に、多くの人がひきつけられる」という。

  コンサートの最後、龍士さんは「ありがとう」と大きな声であいさつし、歓声に応えた。

  真由美さんは「多くの仲間が支えてくれて、龍士はここまで歩んでこられた。感謝します」と話していた。

http://mytown.asahi.com/kanagawa/news.php?k_id=15000000703200001