記事登録
2007年03月20日(火) 00時00分

引導渡される前に逃げた!? 三洋電機・野中会長辞任ZAKZAK

 辞任劇の舞台は、19日午前、大阪府守口市の本社で野中氏が招集した臨時取締役会だった。野中氏が同社の不適切な会計処理について内部調査を行う第三者委員会の設置を提案したが否決されたため、取締役会終了後に井植敏雅社長に辞表を出し、受理された−というのが表向きの動きだ。

 しかし、三洋は「委員会の設立時期や調査の方法論では食い違っていたが、内部調査については取締役会のメンバーは基本的に合意していた」と説明。どうも、野中氏の辞任が腑に落ちないものになっている。取締役の過半数を占めるのは、計3000億円の増資を引き受けた三井住友銀行、米ゴールドマン・サックスグループと大和証券SMBC。「金融機関には野中氏の存在意義を問う声が強く、今期での退任が既定路線といわれていた。野中氏は引責辞任という形を避けたかったのでは」(家電担当アナリスト)との声も聞かれる。

 野中氏は2002年に社外取締役となり、05年6月に会長兼CEO(最高経営責任者)に就任。同時に創業家の井植敏雅氏が社長になったため、「世襲批判をかわす話題作り」と言われた。

 新製品の発表会では巧みに進行役を務めたものの、肝心の業績は一向に改善せず、06年2月からはCEOの肩書が外れてしまう。

 地球環境重視を意味する「シンク・ガイア」を経営理念に掲げたが、「携帯やデジカメは大量生産のビジネスモデルで、言行不一致」(前出のアナリスト)との批判も。「地球のことより、まず社員のことを考えては」(業界関係者)との批判もあった。

 野中氏周辺の“環境”は透明度が低かった。大阪に本社、東京にも台東区にオフィスがありながら、東京・港区の高級オフィスビル内にわざわざ「世界戦略本社」を置いた。公認会計士の資格を持つ夫や、夫の会社と数億円規模のコンサルタント契約を結び、野中氏のインド出張に夫を同行させ、その旅費も三洋に負担させるなど公私混同も批判された。

 野中氏に苦言を呈した法務担当幹部が異動になるなど不可解な人事もあり、「リストラやコスト削減を迫られる社員の士気をダウンさせている」(前出のアナリスト)との指摘も出ていた。

 創業家の「弾よけ」とされた野中氏が去り、今後は井植社長ら創業家の責任問題が浮上してくるのは必至。金融団主導の三洋解体がさらに加速していきそうだ。

ZAKZAK 2007/03/20

http://www.zakzak.co.jp/top/2007_03/t2007032035.html