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2007年03月20日(火) 21時10分

設問担当者の先輩教授が漏らす 獣医師試験 麻布大謝罪朝日新聞

 今月初めに行われた獣医師資格の国家試験の設問が事前に受験生に漏れていた問題で、農林水産省は20日、問題を作成した麻布大学(神奈川県相模原市)の担当教授の同僚教授から同大の学生に講義を通じて漏らされ、さらに東大の学生へも伝わった疑いが強い、と発表した。麻布大も同日、記者会見を開いて謝罪した。

 農水省と両大によると麻布大獣医学部の西田(にした)利穂(としほ)教授(54)が、試験を実施する同省の獣医事審議会の専門委員の一人として今月1、2日に行われた試験で出題された300問の設問のうち5問の作成を担当。西田教授は昨年6月ごろ、先輩にあたる同学部の鈴木嘉彦教授(59)に設問作成について相談し、鈴木教授は西田教授に設問案10問を渡した。西田教授はほとんど手を加えずに審議会に提出し、うち5問が採用されたという。

 一方、鈴木教授は、西田教授に渡した設問案10問を昨年10月、自分の講義を受けた獣医学部の学生100人余りに口述筆記させた。学生の一人は試験直前の2月27日になって、出題が予想される設問として知人の東大農学部の学生に電子メールで教えた。東大生は、学内の受験生が毎年、情報交換のためにつくるホームページ(HP)に設問を掲載したという。

 1250人が受験した今回の試験では、麻布大生143人と東大生30人が受験。漏れた設問の両大の学生の正答率は全体の平均より3割ほど高かった。合格発表前の今月9日に漏洩(ろうえい)が判明したため、農水省は5問について受験者全員を正答扱いとし、合否への影響はなかった。

 西田教授は昨年6月に設問を作成する専門委員に就任。鈴木教授も99年から昨年まで獣医事審議会で国家試験の合否判定などを担当する特別委員などを務めた。

 麻布大の調査に両教授は事実関係を認め、謝罪しているという。鈴木教授は「渡した設問が試験に使われるとは思わなかった」と話しているという。

 麻布大は私立の東京獣医講習所の後身で獣医師育成の名門。同大の政岡俊夫学長は「関係者に多大なご迷惑をおかけし、申し訳ない」と謝罪する一方で「両教授とも設問を漏らしたという認識はなかったと考えている」と話した。また東大農学部の熊谷進・獣医学専攻長は「設問を入手した学生やHPを見た学生は、実際に出題される問題とは認識していなかったようだ」と説明した。

 農水省消費・安全局は漏洩が国家公務員の守秘義務に違反する可能性もあるとみて調査を進め、対応を決める。

http://www.asahi.com/national/update/0320/TKY200703200455.html