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2007年03月20日(火) 00時00分

印象派タッチのロシア・アニメ「春のめざめ」公開朝日新聞

 油絵タッチのアニメで少年の初恋をみずみずしく描く短編「春のめざめ」が、17日に公開された。99年の「老人と海」で米アカデミー短編アニメ賞を獲得したロシアのアレクサンドル・ペトロフ監督が、独自の技法をさらに磨き、印象派の絵画が動き出したような繊細な映像を作り上げた。

アレクサンドル・ペトロフ監督

「春のめざめ」から

 イワン・シメリョフの短編小説が原作。16歳のアントンが、仲のよい使用人の少女パーシャと、妖艶(ようえん)な隣家の令嬢セラフィーマの間で揺れ動く。ペトロフは、リアルな情景の合間に、神話の英雄や荒れ狂う雄牛といったイメージをはさみ、熱に浮かされるような思春期の思いを描く。

 「純粋な愛を求めつつ、性的な欲望にも突き動かされる。その葛藤(かっとう)を表現した」とペトロフ。「今の時代、若い人の愛と性を安易に扱う作品が多すぎると思う。愛とは奇跡であり、性は神秘的で壊れやすいもの、と伝えたかった」

 油絵の具を使い、ガラス板に指で書いては消し書いては消し、という技法は、高い技術と忍耐が要求される。数人の助手を使い、別々のガラス板に描いた人物や背景をコンピューターで合成するなどして、3年がかりで27分の映像に仕上げた。「次は長編に取り組むつもりです」と話す。

 東京・渋谷のシネマ・アンジェリカで、オランダのマイケル・デュドク・ドゥ・ビット監督の短編「岸辺のふたり」(00年)と同時上映。

http://www.asahi.com/culture/movie/TKY200703200297.html