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2007年03月19日(月) 00時00分

日本の才能NYに 欧米ブランドと肩並べ出店朝日新聞

 ニューヨークに日本の若いデザイナーが次々と進出している。かつてのように「前衛性」を前面に押し出すのではなく、ストリート感覚や仕立てなど、欧米のブランドと同じ部分で評価されている。

秘密めいた雰囲気の漂うナンバーナイン・ニューヨーク店

ショーウインドーを見てふらりと立ち寄る人も多いというベイプ・ニューヨーク店

 シャネルやルイ・ヴィトン、プラダなど一流ブランドの店が軒を連ねるソーホー地区。日本のユニクロが大型店を出したことでも話題になった。

 その一角にあるひときわ明るく輝くショーウインドーの中で、スニーカーが回転ずしのようにぐるぐると回っている。日本でも若者に人気の高い「A BATHING APE(通称ベイプ)」のニューヨーク店だ。奥の壁にはトレードマークのサルをモチーフにした迷彩柄が描かれ、日本の店舗をそのまま持ってきたよう。

 05年1月に開店。大きなサイズを多めに置いてはいるが、商品構成は日本と同じ。関税の関係で日本より多少価格が高い。買うのはほとんど現地の人だという。好調なため、ロサンゼルス進出を検討中だ。

 宮下貴裕がデザイナーを務める「ナンバーナイン」は、対照的にトライベッカ地区の静かな通りにある。周囲にブティックは見あたらない。車で乗り付ければ人目につきにくく、顧客は俳優やミュージシャンが多いという。

 03年9月にオープン。店長のアル・アバヤンさんは「当初はお客様の7割が日本人だったが、今は逆転した」と話す。パリ・コレクションの参加や口コミで徐々に知名度が向上。今では米国内だけでなく、欧州から来る客もいるという。

 「最初はもっとストリートっぽい商品が多かったのですが、欧米人の志向に合わせて、シンプルで高級な品をそろえています」。06年の売り上げは前年に比べ30%増といい、隠れ家的イメージを守りながら、もっと大きな店舗への移転も検討中。07年秋冬物からバーニーズにも並ぶ予定だ。

 バーニーズのバイヤー、ジェイ・ベルさんは「ナンバーナインの都会的な感覚はまさにニューヨーク。大成功すると思う。彼を筆頭とする日本の次世代のデザイナーは、ロックやパンク的なストリート感覚に価値を見いだし、それを成熟させて作品に反映させている」と評価する。

 ダウンタウンにあるセレクトショップ「ビー・ブレッシング」では、紳士服の「イリアド」「ジャコメッティ」といった日本のブランドを扱っている。

 同店のマネジャー兼バイヤー鳥居享平さんは「06年ごろから、日本のメンズブランドが注目されている。高品質で程よくロックな感じがあり、きれいで上品な洋服の人気が高くなっている」という。

 初めから米国を拠点にする日本人デザイナーもいる。仙台市出身の庄司正は82年に「タダシ」をロサンゼルスで設立、今回、初めてニューヨーク・コレクションに参加した。手頃な価格のイブニングドレスが中心だ。「ロスでの事業も安定してきたので、ぜいたくな素材も使って新しいことに挑戦したくなった」という。

 構築的な作風の「ユナイテッドバンブー」の青木美帆は74年生まれ。98年にブランドを設立し、パートナーのトゥイー・ファムと04年秋冬から同コレクションに参加している。「東洋人だから受け入れられにくいと思ったこともある。でも若い時に自分のブランドを持てたのは、周りがそれを当然としていたニューヨークだったから」

 ニューヨークは様々な形で日本の才能を引き寄せている。

http://www.asahi.com/culture/fashion/TKY200703190167.html