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2007年03月19日(月) 02時05分

3月19日付・編集手帳読売新聞

 死ぬリスクよりも、長生きするリスクに備えたいという人々の意識の表れだろうか。生命保険協会によると、生保の主力商品「定期付き終身保険」の契約件数を「医療保険」が昨年9月末現在で上回った◆少子高齢化が進む中、働けなくなったり、高額な治療費が必要になったりした時のためにと、がん保険や3大疾病特約も人気だ◆だが、その特約などの保険金を、請求がないといった理由で支払っていないケースが多数あることがわかった。金融庁は2月、過去5年分の全不払いを報告するよう各社に命じた。大手生保は担当者を1000人単位で増強し、調査に大わらわだ◆がんの場合など、未請求事例の中には、請求できますよと案内すれば、病名を知らぬ契約者への「告知」になりかねないものも確かにある。だからといって本来支払うべき保険金が払えないなら、商品設計や運用に問題ありだろう◆1881年に設立された明治生命保険(現明治安田生命保険)が、日本初の近代的生保とされる。その社祖、阿部泰蔵は会社規則に「生命保険は長生の幸福を得る者相共に些少(さしょう)の金を捐(す)て、短命の不幸に遭う者を助くるの法なり」と記した◆「短命の不幸」への備えから「長生の幸福」を損なわぬためへ。変わる顧客ニーズに、商品を売る側の対応が追いつかないのでは困る。

http://www.yomiuri.co.jp/editorial/news/20070318ig15.htm